コロナで試作ニーズが過熱?3Dプリント用樹脂材料の販売量が約4割増加へ
三菱ケミカルは、3Dプリンティング用樹脂材料の販売量が大幅に伸び、2020年度は前年度比で3―4割増加する見通しだ。新型コロナウイルス感染症拡大を機に、さまざまな分野で商品デザインの見直しが始まり、試作ニーズが高まっているという。同社は3Dプリンターの主要3方式に対応する材料の品ぞろえ強化や、欧州での生産能力増強で、市場成長率を上回る事業拡大を目指す。(梶原洵子)
【市場の伸び続く】
新型コロナ感染拡大後、3Dプリンティング材料に追い風が吹いている。同材料のプロジェクトを担当する海老原真道プロジェクトマネージャーは、「3Dプリンターによるフェースシールドの生産は氷山の一角。新型コロナで人の欲しいモノやデザインが変わり、試作ニーズが増えたと感じる」と語る。
同社はこれまで3Dプリンティング樹脂市場について年10%の伸びを予想していたが、足元はこれを大きく上回っている。「21年度は落ち着くと思うが、まだ勢いは落ちていない」(海老原プロジェクトマネージャー)。
そこで同社は欧州拠点で20年度内に、「熱溶解積層(FDM)方式」の3Dプリンター用フィラメント材料の生産能力を増強する。同方式は固形材料を高温で溶かしてノズルから吐出して積層する。投資額は非公表。フィラメント状に成形する押出機を増設し、販売増加に相当する能力増強を行う。ポリ乳酸やABS樹脂など幅広い材料で展開する。
【技術を補強】
他の2方式向けの材料は、近く事業を立ち上げる。液体樹脂を紫外線(UV)で固める「液槽光重合(SLA/DLP)方式」用の材料は21年1月から、粉末樹脂を熱で固める「粉末床溶融結合(PBF)方式」用の材料は21年度から本格的に販売を始める。PBF方式は当面、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に注力する。
3Dプリンティングはまだ黎明(れいめい)期で、同社は3方式の材料がそれぞれ伸びると予想する。材料群の強化に加え、M&Aや業務提携などを活用して技術を補強する。将来は量産への3Dプリンティングの利用や、試作と同じ材料を量産時の射出成形に使うニーズなども増えるとみて、3Dプリンティングに対するバリューチェーンの強化を続ける。
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