「自宅への出張」から「自宅を勤務公署とみなす」に変更する愛知県の前進
10区分の時差出勤を継続
愛知県は職員のワークライフバランスや柔軟な働き方に対応するため、1月にテレワーク用端末100台を導入し、在宅勤務の試行を始めた。12月末までに同1000台を追加導入し、2021年1月を在宅勤務キックオフ月間として積極的な利用を促す。働き方の見直しで時間外勤務の縮減を図るとともに、育児休業や介護休暇を取りやすい環境整備につなげる考えだ。(名古屋・市川哲寛)
端末100台は建設事務所や保健所などの地方機関を中心に導入した。出張時や現場作業時のデータ送信、報告書作成といった業務を効率化するためのモバイルワーク向けが主眼だった。
新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言で4―5月に出勤を抑制したが、各職員が使っているパソコンを持ち帰っても県庁の情報システムネットワークに接続していない状況で作業せざるを得なかった。そこで月内に同1000台を追加し、本庁は各グループ1台、出先機関は各課で1台の割合で配備する。各職員が1カ月に1度は在宅勤務で端末操作を経験してもらう。「試行の緒に就いたばかりだが、在宅勤務の課題を洗い出し、仕事の進め方を変える」(石田邦洋人事局人事課監察室長)。
21年1月から在宅勤務推進にあたって取り扱いを「自宅への出張」から「自宅を勤務公署とみなす」に変更する。自宅への出張では旅行雑費が発生する場合があったが「理解が得られない」(同)として10月に廃止した。
また新型コロナ感染拡大防止のため、再度の出勤抑制などで職員がテレワーク用端末を使わず緊急的に在宅勤務する場合、職員個人の携帯電話から職場への通話料が公費負担となる通信サービスも21年1月に導入する。職員のスマートフォンなどにビジネス用の「050」で始まる番号回線を与え、特定通話の電話料金を公費で負担できるようになる。
一方、コロナ対応で10区分の時間帯がある時差勤務制度は、コロナ対応終了後も育児や介護目的では10区分で使えるようにする。
管理監督者向け研修では19年度から時間外勤務を減らす啓発活動を行っている。人工知能(AI)活用など業務改革(BPR)で事務作業を簡素・合理化する。これらで職員1人当たりの時間外勤務時間を19年度実績の162・3時間から年度ごとに減らす。作業分担や人員配置の見直しで長時間勤務者の削減を図ってきたが、豚コレラなどの対応で時間外勤務が増加傾向にあるためだ。
男性職員の育児休業取得では子どもが生まれた時に面談で休業を働きかける活動が根付き、25年度までに取得率50%(20年度見込み41・8%)と、国の目標(30%)を上回るレベルとした。各局長などのワークライフバランス行動指針に男性職員の育児休業取得促進を共通取り組み項目に位置付け、取得しやすい環境を整える。啓発チラシも配布し、「取得への懸念や不安を取り除く」(同)。
さまざまな形で働きやすい環境を構築して職員の意欲を高め、業務改善や専門能力の向上につなげる方針だ。