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Wi-Fi、ドラム式洗濯機、宅配ボックス...コロナ禍で見えた新しい住宅設備ニーズとは?

新型コロナウイルスの流行で多くの業界が苦しむ中、好調なのが住宅関連の業界だ。外食やホテル向けの物件は低調だが、「マンションやアパートの担当者は極めて多忙。次々と契約が決まる」と不動産大手のトップは話す。ステイホームの必要性で書斎が欲しくなるなど、住環境を見直す動きが背景にある。

       

日本は住宅を「耐久消費財のように使い捨てにする国」と言われてきた。欧米では石造りの住宅を百年以上も使い続けることが珍しくない。自分の家をペンキ塗りなどして大事に維持すれば、買った時よりも高く売れる。日本では20年も住んだ家は「ボロボロの築古」といわれ、売りに出しても大した値がつかない。

もっとも日本で古い住宅に人気が出ないのは、木造で長持ちしないからだけではない。時代に応じた設備が不足しているからだ。マイホームを建てたり、新築住宅を借りたりする人の多くが求めているのは、時代を反映した最新の設備である。

マンションやアパートの必須設備に関する調査を見ると、エアコンや風呂(シャワーのみを含む)は当たり前すぎて、もはやランキングにすら入らない。ここしばらく、必須設備の上位にあるのは「インターネット設備」。最初から家の中に配線してあり、引っ越してきたその日からネットが使える。アパートなら接続代金は家賃に含まれていて無料というものだ。それもスマートフォンの普及と共に、Wi-Fiの需要が高まっている。単にLAN配線があるだけでは「インターネット設備」と見てもらえなくなりつつある。

また、単身者でもファミリーでも必須度が高いのは「室内洗濯機置き場」。30年前のバブル期ですら、マンションのベランダに洗濯機を置く家庭が珍しくなかったが、今の若い世代には想像も出来ないだろう。しかも近年ではドラム式洗濯機が普及し、前面に洗濯機のドアを開けられるだけのスペースがないと「室内洗濯機置き場」として不十分。居住者のニーズの変化速度は、それほど速い。

テレビカメラ付きドアホンとオートロック、玄関の宅配ボックスも年々、人気が高まっている。セキュリテイ意識の高まりというよりも、押し売り撃退や、宅配便の受け取りが面倒だという新たなニーズによるものだろう。

もうひとつ、収納に対するニーズの高まりも無視できない。寝室には「ウォーク・イン・クローゼット」、玄関には靴のまま入れる「シューズ・イン・クロゼット」を設置した設計は人気が高い。単身者でも、サーフボードやマウンテンバイクを室内で保管したいというニーズがあり、多目収納の有無は今後、注目されていくだろう。

        

こうした新たな設備を経験してしまうと、そうした設備のない住宅に住むことに不満を感じてしまう。後付けで設置できるものばかりではないから、つい新しい家が欲しくなる。マンションのデベロッパーやアパートなど賃貸住宅を提供する業者は、常に最新の顧客ニーズを把握しようと努力し、便利な設備を提供することで差別化を図ろうとする。新しい住宅が建てられ続けているのはコロナのせいばかりではない。新たな設備ニーズが牽引力となっているからではないだろうか。

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