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護衛艦・潜水艦、「国産」を維持するための予算経費の工夫

護衛艦・潜水艦、「国産」を維持するための予算経費の工夫

進水した次世代護衛艦「くまの」のステルス形状の船型

海上自衛隊は次世代型護衛艦や潜水艦が進水、長距離巡航ミサイルを国産で開発を始める。海自では10月4日、三菱重工業の神戸造船所(神戸市兵庫区)で新型潜水艦「たいげい」が、11月19日に三井E&S造船(東京都中央区)の玉野艦船工場(岡山県玉野市)で新型護衛艦「くまの」が相次いで進水した。

たいげいは前級のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」、同12番艦「とうりゅう」に続いてリチウムイオン電池を搭載。長時間の潜航ができるほか、急速潜航や水中での行動も有利とされる。

くまのは対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備え、魚雷発射管やミサイルなどの電波を受けやすい機器を艦内に“格納”。省人化設備や自動化で乗員数は約90人と同クラス護衛艦の半分以下になり、船価コストも抑えた。

また、陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替策でイージス艦2隻の新造も計画されている。

次期戦闘機開発では三菱重工、IHIが関与し、潜水艦の建造では三菱重工と川崎重工業の2社が交互に建造し、イージス艦をはじめとするその他の護衛艦も造船会社は限られているのが実情だ。

防衛産業で軸となる重工大手は、コロナ禍を受けて民間旅客機部門が不振で、造船部門も韓国や中国との安値競争で苦境にあえぐ。工場閉鎖や集約など人員リストラを進めており、日本の安全保障を守る糸は年々、細くなっている。後継者不足や技能伝承の問題も見逃せない。

自民党国防部会では、輸送機「C2」を例に挙げ、予算の関係で注文がない年は企業の準備努力が台無しになるとの指摘がなされた。年に数機など安定調達の見通しが立たなければ企業は該当部門を縮小・配置転換せざるを得ない。

防衛装備品は年1、2機の少数生産のため量産効果も出にくい。日本の装備品が欧米に比べ高いと指摘されるのは、こうした事情もある。防衛装備品の安定納入のため防衛省は20年度第3次補正予算案で関連経費として2816億円を盛り込んだ。コロナ禍で財務状況が悪化している企業を救うため21年度に支払う予定の経費の一部を前倒しで支払うというものだ。防衛産業の保護にはこうした“知恵と工夫”も求められている。

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