”本業”が厳しい!食品機械に活路を見出す企業たち
中堅機械メーカー・商社が新規分野として食品機械事業を強化している。新型コロナウイルス感染症の影響で食品は「巣ごもり」によるテークアウト需要が伸びる。外食の回数が減る一方で高級志向が強まっており、高品質を実現する機械技術の活用領域が広がる。営業活動の制限や受注の先送りなどで既存の機械事業が厳しい中、将来の成長が有望な食品分野に活路を見いだす。(大阪編集委員・林武志)
エスペックはプロの調理人向けの減圧低温加熱調理器「ヴィードプロ」を10日に発売する。食材のうまさを引き立たせる温度と真空度を自在に設定できる。調味料の染み込ませや、食材の栄養価・食感を保ったまま加熱する低温調理などが可能となる。
2017年の食品機械分野参入時に発売した機種を刷新し、真空度を精密に制御できるようにした。価格は75万円程度(消費税抜き)。国内外の高級レストランやホテルのほか食品会社の研究部門などにも提案する。
同社は環境試験器大手。足元は設備投資の先送りなどが響くが、新規事業の食品機械は26年3月期に20億円の売上高を目指す。
マルカは店舗のショーケース用などの冷凍機を照準にする。同社は工作機械などの専門商社。サンドイッチ用食パンをカットする機械などを手がけるミヤザワ(長野県伊那市)を19年に傘下に収め、食品機械事業に参入した。
ミヤザワはイタリアの冷凍機メーカー「SCM FRIGO」と国内販売総代理店契約を結んでいる。SCMは自然冷媒の二酸化炭素(CO2)を用いた空冷式冷凍機が強み。CO2冷媒は地球温暖化係数(GWP)が1と低く、温暖化抑制に向けた今後の置き換え需要を取り込む。
ノンフロン冷凍機はスーパーなどのショーケース用の小・中型ユニットから冷凍倉庫用の大型ユニットまで幅広く扱う。マルカの販路も活用し、ミヤザワの売上高は21年11月期に20年11月期見通し比約50%増の20億円を目指す。
日阪製作所も食品・化学機械などを製造する小松川化工機(東京都千代田区)を19年に子会社化した。日阪は熱交換器などが主力だが、滅菌・殺菌対応など「将来の当社を支える領域になる」(竹下好和社長)とみて食品分野の取り込みを狙う。
富士経済(東京都中央区)はスーパーなど量販店の中食・総菜の国内市場が、小売りベースで23年に19年比5・0%増の2兆3260億円になると予測する。機械メーカー・商社各社はそれぞれ強みとする「本業」の機械製品で挽回を目指しながら、市場が堅調な新規事業の食品機械関連でテコ入れを図る。