「トマトから野菜へ」。事業多角化を加速するカゴメの経営戦略
“脱トマト”多角化加速
カゴメは「トマトの会社から野菜の会社へ」をビジョンに掲げ、事業の多角化を進めている。主力事業であるトマト以外の野菜の調達や研究、商品開発などをアライアンスによって進める戦略の下、複数の企業や農業法人、研究機関などと連携する。山口聡社長にアライアンスの狙いや、今後の事業展開について聞いた。(高屋優理)
―アライアンスによって、どのようなシナジーを期待していますか。「事業を拡大するため、商品としての野菜の種類を増やすことを目指している。だが、自前で一からやるのは、コストや時間がかかる。トマトについては品種開発や商品開発、販路拡大を自前でやる。トマト以外の野菜についてはアライアンスによって事業展開のスピードを上げ、単独ではできないことを実現したい」
―2月にタマネギの加工や販売を手がける合弁会社「そうべつアグリフーズ」を農業法人のミナミアグリシステム(北海道壮瞥町)と立ち上げました。「タマネギはオニオンソテーなどの加工品の売り上げが伸びていて、質の高い国産タマネギの需要も高まっている伸びゆく商材。ミナミアグリシステムとタマネギの栽培や加工を一緒になってやる。そうべつアグリフーズは廃校になった中学校の校舎などを使って、加工場などの設備を整備する計画で、農業振興や地方創生にもつながる」
―農業法人と連携する狙いは。「農業法人は農業従事者が高齢化などで減少する中で、今後、農業の担い手として重要性が高まっていく。だが、今はまだ食品メーカーとのコラボレーションがあまりない。当社との取り組みを進めていく中で、将来的には農業の6次化のビジネスモデルも確立していきたい」
―研究開発ではどのようなアライアンスを進めていますか。「新種の野菜の開発を自治体の研究機関などと進めており、事業化できるところまで来ているものもいくつかある。また、産業技術総合研究所と栽培の技術に人工知能(AI)の活用を研究していて、実用段階に来ている。オープンイノベーションによって、いろいろなことができると実感している」
カゴメはトマト関連の事業展開は自社で手がける。それ以外の野菜の事業展開はアライアンスによって外部のリソースを活用する、と明確に切り分けて戦略を展開しているのが特徴だ。野菜の品種開発や商品開発だけでなく、海外での販路拡大も日清食品ホールディングスと連携しており、この戦略を徹底している。アライアンスをうまく活用して事業の選択と集中を進め、効率化していくことで、収益性の向上を目指している。