ニュースイッチ

建機販売は冷え込んだまま。コマツ社長が見据える回復期と次の一手

建機販売は冷え込んだまま。コマツ社長が見据える回復期と次の一手

本格回復22年以降になりそう

国内や欧米で新型コロナウイルス感染症が再拡大している。政府のテコ入れ策などで持ち直してきた景気が、再び落ち込みかねないとの不安が広がる。ただ、建設機械の稼働状況や工場での生産、注文状況は今のところ大きな変化は出ていない。コマツの小川啓之社長に今後の見通しを聞いた。

―新型コロナの感染拡大が止まりません。

「国内も『第3波』が来ているが、顧客動向に変化はない。4―5月には工事もストップしたが、現在は建機はしっかり稼働しており、落ち込んでもいない。第1四半期(4―6月期)が底で、第2四半期(7―9月期)から第3四半期(10―12月期)にかけてマイナス幅が縮小するとの予想に変化はない。建機需要が前年比でプラスになるのは21年度、本格回復は22―23年とみる」

―顧客の購買意欲は回復していますか。

「マインドは厳しい。新車購入需要は依然冷え込んだままだ。先行きが見えない状況で顧客は大きな投資に慎重になっている。新車の回復に時間がかかる半面、部品サービスの需要はそれより早期に戻ると予想している。アフターマーケットの取り込みに今後も注力する。新車購入は景気変動の影響を強く受けるが、アフター市場は安定している強みがある」

―バイデン氏の米大統領就任で環境対策が加速する半面、石炭産業は沈下が進み、鉱山機械の需要が減るとの予測もあります。

「大きな流れではそうだろう。ただ欧米や日本と違い、新興国は電力需要が旺盛で、発電はほぼ石炭火力に頼っている。石炭需要が今後数年間で半減するなどの急激な変化は起こらない。加えてニッケルや銅の鉱山は電気自動車(EV)関連で需要が伸びている。当社はこれらの市場に対応すると同時に、石炭鉱山関係でも生産効率を上げるための無人ダンプやIoT(モノのインターネット)の取り組みなどを提案していく」

―建機の電動化は。

「電動化の流れはますます加速する。特に欧州ではそうだ。当社はミニショベルで電動タイプを投入し、ハイブリッドショベルは08年から取り組んでいる。欧州の建機の4割は今やハイブリッドタイプだ。電動化はその先の目標になる」

―電動化に必要なバッテリーの調達は。

「コストやパワーの問題もあるため、電動ショベルが短期間で一気に普及するとはみていない。今後、内外の電池メーカーで新製品開発が進み、コストがどんどん下がっていく。その時点で最適な電池セルを調達すれば良い。電池セルに車体制御や駆動制御をどう組み合わせるかがポイントだ。それこそが我々の真骨頂になる」

小川啓之社長

【記者の目/成長分野への投資がカギに】

世界の建機市場は最悪期は脱したとはいえ、回復のペースは鈍く、我慢比べの時期がしばらく続くとの見方が大勢だ。一方で環境方面への取り組みや電動化の動きは今後加速が予想される。コストダウンと並行して、成長分野へ向けた人材育成と投資がカギになりそうだ。(編集委員・嶋田歩)


【関連記事】 建機メーカーが大注目する異色のレンタル会社
日刊工業新聞2020年12月4日

編集部のおすすめ