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豆腐屋にも…拡大続けるロボット市場―ファナックの今3月期見通し、上方修正

ロボなどがけん引で経常益2363億円
豆腐屋にも…拡大続けるロボット市場―ファナックの今3月期見通し、上方修正

相模屋食料の封入工程。無数の木綿豆腐に容器をかぶせていく。稼動するのはファナックの5軸多関節ロボ。


素朴な疑問


 ファナック製5軸多関節ロボット「M―710iC/50H」3台が、コンベアを流れる無数の豆腐に、次々と容器をかぶせていく―。主力の一つである木綿豆腐の封入工程。活躍するのはファナックカラーの黄色ではなく、クリーン仕様の白いロボットだ。「当社が導入を検討し始めたのは、ちょうどファナックが白いロボットを手がけ始めた時期。手厚く導入を支援してもらえた」と鳥越淳司社長は振り返る。

 「豆腐は冷やさず熱いままで食べるのが1番おいしい。なぜその状態でパックしないのか」。ロボットの導入は、鳥越社長のそんな素朴な疑問から始まった。製品サイズに切断した豆腐を容器に詰めるのは、従来は人手作業。高温で行うのは不可能なため、水中で冷えてから詰める方式が定着し、自動機が普及した今も変わっていない。

おいしさ追求


 鳥越社長が目指したのは、そんな常識を打ち破る封入法だ。「とにかく熱い状態で容器に詰めたおいしい豆腐を追求したかった」という。豆腐業界では前例のない方式。相談した多くの機械メーカーが、難色を示した。当初考えたのは、水中で豆腐が冷える前に高速で自動封入するシステム。だが、水中での高速制御は困難なため、結局実現しなかった。

 それでも鳥越社長は諦めなかった。周囲の意見を参考に、水の外、つまりコンベア上で容器と豆腐を組み合わせる方式を発案。容器に豆腐を収めるのではなく、豆腐にロボットが容器をかぶせ、後に反転させる仕組みだ。軟らかい豆腐をロボットが扱うのは困難だが、容器ならば比較的容易。まさにコペルニクス的発想の転換で不可能を可能にした。

個体差に対応


 ロボットを活用する理由の一つが、個体差に柔軟に対応できる点だ。コンベア上方に設置したビジョンセンサーが豆腐の形状を認識し、それに合わせてロボットが容器をかぶせる角度を微妙に調整する。これにより、形状に合わせてスムーズに容器へ収容し、豆腐が割れたり欠けたりするのを防いでいる。

 木綿豆腐のほか、絹豆腐の封入でも2台のロボットを活用。相模屋食料にとっては、これら2種が会社の土台を支える定番製品だ。

 製法改革により付加価値を高め、会社は急成長を遂げている。06年2月期に41億円だった売上高は、16年2月期に前期比12・4%増の200億円となる見通し。「1000億円の会社を目指したい」と鳥越社長は意気盛んだ。

 今後に向けては、従来以上に作業者負担の少ない職場を創出することが目標。そのために、ロボットの活用幅も広げていくという。
(文=藤崎竜介)
日刊工業新聞2015年10月28日 総合1面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
拡大を順調に続けるロボット市場。米国、中国、欧州など海外市場がけん引する中、日本でもまだまだロボット導入で効果の出る現場がたくさんありそうです。

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