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日中間のビジネス往来再開! 対面とオンラインの良い所取りなるか

新型コロナウイルス感染拡大で中断していた日中間のビジネス関係者の往来が30日、再開された。日本の大手製造業のグローバル事業はコロナ禍で一時停滞したが、自動車や工作機械を中心に中国経済の回復に支えられる形で持ち直しており、往来再開への期待は大きい。一方コロナ収束が見えない中で、現地拠点を拡充する動きもしばらく続きそうだ。

日本の工作機械業界の足元の受注環境は、中国市場の需要回復にけん引される形で、5月を底に回復基調が続く。日本工作機械工業会(日工会)によると、10月の中国向け受注額は前年同月比約8割増だった。飯村幸生会長(芝浦機械会長)は「今後もある程度高いレベルで推移するだろう」と見込む。

主要工作機械メーカーはコロナ禍による移動制限を受け、ウェブを活用した商談や立ち会い検査に乗り出しているが、現物確認などのニーズも根強い。往来再開により、対面での商談や立ち会い検査も円滑に行えるようになる。飯村会長は「受注、サービスの面で非常に大きな追い風となる」と期待する。

日本の乗用車メーカーの世界生産も中国の市場回復で持ち直している。曙ブレーキ工業の宮地康弘社長は2019年の就任以来実現できていなかった中国生産拠点の訪問について「現地・現物・現認の活動が再開できることはありがたい」と往来再開を歓迎する。

化学業界にとっても、中国は自動車部材や電子材料の重要市場だ。往来再開を受け、化学大手の中国現地法人幹部は「これまで顧客との打ち合わせや商談は現地スタッフが訪問し、日本の技術者はオンラインで参加していた。特に不便はなかったが、『直接会えばつかめる情報もあったのではないか』という思いはある」と話す。多くの企業がニーズの発掘や新規顧客開拓の活性化に期待している。

一方でオンラインのメリットもあり、「対面ではアポイントが難しかった幹部クラスとも、オンラインでは面談しやすくなったようだ。今後、対面とオンラインの良い所取りをしたい」(住友化学広報)という。ただ、すぐに出張を再開する企業ばかりではなく、三菱ケミカルホールディングスと三菱ケミカルは、現在のところ中国に限らず海外出張を禁止としている。

半導体製造装置業界では、従来から現地化が進んでいるため、コロナ禍の影響は限定的だったもよう。往来再開についてもディスコ、日立ハイテク、キヤノンはそろって「影響は特にない」とした。

ただコロナ禍でリスク管理の重要性が高まったのは事実で各社は現地の強化を図る。東京エレクトロンは、現地法人に半導体製造装置を納入し、現地でも研修を実施できるようにする。「装置立ち上げなど現地法人で対応できるよう引き続き拠点機能を強化する」(広報)。キヤノンは、現地従業員向けの研修で仮想現実(VR)ヘッドセット・スマートグラス導入の検討を始めた。日立ハイテクは今後「駐在員の数を増やしていく」という。

日刊工業新聞2020年12月1日

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