多機能ポンプでタイの山火事防止。SDGsと中小企業の新たな形
タイの森林火災対策に貢献
【海外展開】
ナカムラ消防化学(長崎県大村市、中村康祐社長)は、ポンプ製品の海外展開で国連の持続可能な開発目標(SDGs)を生かす。タイでの森林火災対策に向けた国際協力機構(JICA)の事業を軸に、消防文化の紹介を含めて現地社会に貢献する。また産学官金による連携の起点になるなど展開を広げている。
ナカムラ消防化学は消防ポンプ車や消火剤、消防関連製品の製造・販売を手がける。SDGsについて「そもそも消防事業はソーシャルビジネス」(中頭徹男取締役)との考えを基に、2017年頃からSDGs17ゴールを海外事業と結びつけて展開を探ってきた。
【ポンプで解決】
その取り組みがタイ北部・チェンマイでの山火事対策だ。焼き畑農業が盛んな山岳地帯だが消防機材や消防技術の質が低い。同農業は乾期に森林火災を招くほか、「飛行機から下を見ると分厚い煙が覆っている」(中村社長)など煙害が深刻という。そこで狭い場所でも扱いやすいポンプで解決を図る。JICAの民間連携事業として18年度に採択され、19年度にかけて現地調査を進めた。
同社の多機能ポンプは小型で遠方に届く吐水力が強み。現地では日常用途とともに、非常時の消火用としての有用性を確かめる。一方、車で持ち運ぶための持ちやすさの改良や、放水部の現地仕様への適応も研究する。
SDGsというキーワードにより連携がスムーズに進んだ。同社が本社を置く大村市の園田裕史市長を伴ってチェンマイを訪れたことを契機に、自治体間の交流に拡大した。また消火技術は大村市消防団の協力を得て、山浦弘之団長が現地で自衛消防の文化とともに紹介した。
【パートナー認定】
このほか長崎大学、福岡銀行のバンコク駐在員事務所、山口フィナンシャルグループの現地提携先などのパートナーも含めた体制を構築。ナカムラ消防化学の海外展開の経験も生かしながら、事業を前に進めている。
JICAからは「SDGsパートナー」の認定を受けた。国事業としては新型コロナウイルス禍により時期がずれ込んでいるが、次期の事業で実証に進みたい構え。最終的にはポンプの輸出や現地生産も視野に入れる。
中村社長はSDGsについて「学生の方がよく知っている」など、採用活動はじめ中小企業にも必須になりつつあると感じる。今後は経営面でも導入を広げ、アクションプランとしてまとめるなど社内での浸透を図る考えだ。