エプソンがコロナ禍でもプリンター増産のなぜ?「供給すれば売れていく状態」(小川社長)
セイコーエプソンは大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターの生産能力を年内に1―2割引き上げる。同プリンターの組み立てを委託しているタイの協力会社に数億円を投じて生産ラインを増強するほか、中国の自社工場も増強。在宅勤務・学習用途で販売が好調なプリンターの需要増に応える。一方、コロナ禍で販売が落ち込んでいるプロジェクターなどは生産を調整。長期化する棚卸し資産回転日数を2021年3月期に2割短縮する。
大容量タンク搭載プリンターの組み立てはインドネシアやフィリピン、中国の自社工場のほか、事業継続計画(BCP)の観点からタイの協力会社にも一部委託している。ただ、インドネシア工場では9月後半に約2週間の臨時休業になるなど、生産制約が発生。現在は通常稼働に戻ったものの、新型コロナウイルス第3波の到来も懸念される中、予断を許さない状況が続いているという。
エプソンは10月末、20年度通期の同プリンターの販売台数を7月公表比40万台増の1000万台へ上方修正した。先進国を中心に在宅勤務・学習需要が継続しているほか、外出規制などの影響で一時低迷していたアジア新興国での需要も回復しつつある。「小売店の陳列棚は品切れ状態。供給すれば売れていくという状態が続いている」(小川恭範社長)と、供給不足の解消が課題となっていた。
一方、同社の棚卸し資産回転日数はコロナ禍による販売減で長期化している。プロジェクターのほか、販売時点情報管理(POS)用プリンターや時計の販売が低迷し、在庫が膨らむ。20年3月の82日が、同9月には103日に延びていた。これを21年3月には、生産調整で20年3月水準並みの約80日に戻す。
今後は新型コロナなどのリスクに備え、製品・部品別に在庫日数も見直す考え。瀬木達明取締役常務執行役員は「在庫の持ち方も変わってくる。プリントヘッドなどの基幹パーツは長めの在庫を持っておかなくてはならない」としている。