ユニクロも一手、アパレル業界に環境対策の波
世界の繊維・アパレル業界が一斉に環境対策を強化している。国際機関から世界2位の環境汚染産業と指摘され、業界を挙げて奮起している。欧州では競合する高級ブランドが手を組み、気候変動対策を推進する。スポーツアパレルもリサイクルに積極的だ。欧州発の環境対応の波は、日本にも押し寄せている。
中国紡織工業連合会と非政府組織(NGO)のWWFチャイナは共同して環境対策プログラムを始めた。中国の繊維工場に水使用22・5%減やエネルギー使用30%減を呼びかけており、現地に2万以上のある繊維工場のうち3000工場の参加を目指す。スウェーデンのH&Mなどの海外アパレルや英HSBCといった金融機関もプログラムを支援する。日本からは繊維商社の豊島(名古屋市中区)が賛同し、現地の取引先にプログラムへの参加を勧める。
繊維・アパレル業界で始まった環境対策の震源地が欧州だ。2019年8月のフランスでの先進7カ国首脳会議(G7)直前、マクロン仏大統領の働きかけで「ファッション協定」が発足した。「グッチ」などのブランドを傘下に持つケリング・グループ、アルマーニ、シャネルといったアパレル企業が参加し、50年までの二酸化炭素(CO2)排出ゼロを掲げた。
スポーツアパレルも積極的だ。ドイツ・アディダスは21年夏、リサイクル可能な素材で作ったランニングシューズを発売する。素材1種類から接着剤を使わずにシューズを製造するため、使用後に分解して溶かし、形状を再生するとシューズを作れる。
有名企業が一斉に動きだした背景に、業界への厳しい視線がある。米マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの報告書によると、繊維・アパレル業界の温室効果ガス排出量は世界全体の6%を占める。染色に大量のエネルギーが使われているからだ。また世界銀行は工業用水の全汚染の20%が繊維工場の排水が原因と指摘した。こうした状況もあり、国連貿易開発会議は環境汚染産業の1位に石油、2位に繊維・アパレルを挙げた。
日本企業も取り組みを加速している。ファーストリテイリングは客から「ユニクロ」ブランドの商品を回収し、新しい商品にする「リ・ユニクロ」を始めた。11月には第1弾として回収後の商品を再生したダウンジャケットを発売した。青山商事は染色の水使用を削減して製造したスーツを発売。染色後の水を浄化して再利用する中国メーカーが製造した生地を採用した。
日本の業界は構造的な環境問題を抱えている。欠品を防ぐため年40億点の衣類を供給するが、多くが売れ残っている。しかも日本で流通する商品の9割以上が輸入。日本の業界は海外で環境負荷をかけて生産した商品を大量に廃棄している。
WWFジャパンの金子幸史氏は「日本において企業と消費者が環境問題を正しく理解し、サプライチェーン(供給網)の上流に良い影響を与え、持続可能な流れにしていくことが望ましい」と期待する。海外の生産拠点に環境対応を働きかけることが、日本の繊維・アパレル業界には必要といえそうだ。