中韓勢への苦戦にコロナが…サノヤス、祖業の造船から撤退
中韓勢に苦戦・コロナ直撃
サノヤスホールディングス(HD)は9日、祖業の造船事業から撤退すると発表した。傘下の中核造船会社、サノヤス造船(大阪市北区)を2021年2月末に新来島どっく(東京都千代田区)に売却する。譲渡額は100万円。造船に携わる約600人の従業員は新会社が引き継ぐ。巨大化する中国や韓国の造船所との競争激化に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による海運市況低迷などで新造船事業の収益確保が困難と判断した。
サノヤス造船は水島製造所(岡山県倉敷市)や大阪製造所(大阪市西成区)などを持つ。造船事業の20年3月期売上高は299億円、営業損益は27億円の赤字だった。21年3月以降の造船事業は新会社「新来島サノヤス造船」が引き継ぐ。
9日、大阪市内で記者会見したサノヤスHDの上田孝社長は、中韓勢との厳しい価格競争を踏まえ「ここ数年、新造船の仕事では利益が出ない体質になっている」と指摘。コロナ禍で海運市況が停滞し、「新しい仕事が決定的に止まった」と売却理由を説明した。
新来島どっくへの譲渡は、同じ瀬戸内海エリアに造船所があり、2社とも実質“非オーナー系”という共通点も後押ししたという。
上田社長は「当社の国内シェアは約2・5%。スケールの大きいところの中に入ったほうが良い。(新来島側はサノヤスが得意とする)パナマックスバルクキャリア(バラ積み貨物運搬船)をしっかり造るヤード(造船所)はないので、当社の技術力を評価してもらえた」と話す。今後、「中堅企業連邦経営」(上田社長)として、事業の多角化に力を注ぐ方針だ。
一方、新来島は傘下に複数の造船所を抱え、自動車運搬船やケミカルタンカーを中心に多様な新造船を手がけ、売上高1000億円規模を維持している。技術開発力に定評のあるサノヤス造船をグループに加え、さらなる船種拡大を図る。