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現金が帳簿上で8億円なのに実際は50万円。Nutsは新興上場企業破産の典型パターン

相次ぐ業態転換でずさんな資金戦略
現金が帳簿上で8億円なのに実際は50万円。Nutsは新興上場企業破産の典型パターン

ジャスダック上場のNutsが破産手続き開始決定(写真は東京証券取引所)

ジャスダック上場のNutsが9月16日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は1977年8月に塩化ビニール製品の販売を目的に三高産業の商号で設立。その後、89年には「トップボーイ」の店舗名で家庭用ゲームソフト・ゲーム機器の販売事業に転換し、98年7月に商号をトップボーイへ変更、翌年9月には株式を店頭登録した。テレビゲーム市場の成長とともに業績も伸長し、2002年3月期に年売上高約131億8200万円を計上。03年6月に商号をコモンウェルス・エンターテインメントに変更した。

しかし同業者との競合や市場の縮小から05年にトップボーイ事業を廃止。コンテンツ事業などに転換を図るが、業績不振に歯止めがかからず11年3月期から17年3月期第2四半期まで継続企業の前提に関する注記(GC注記)がなされていた。この間、16年9月に現商号へ変更。医療関連事業へ参入していたが、直近も単体で4期連続の赤字を計上していた。

こうしたなか、20年2月に金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で証券取引等監視委員会による強制調査に入った。さらに監査法人による財務諸表監査で3月末時点の現金が帳簿上で8億900万円となっていたが、実際は50万円しかないこと(以下、現金差異)が発覚、監査法人と監査契約を合意解除した。

その後、20年3月期決算確定のため別の監査法人を選任したが監査報酬の一部を期限までに支払えず、監査契約は解除。期限までに有価証券報告書を提出できず上場維持、事業継続の見通しが立たず破産となった。その後、外部調査委員会の調査報告書が発表され、偽計や現金差異、不適切な資金流出などの問題が明るみとなった。

あまたの商号変更や業態転換。純資産の毀損(きそん)を度重なる増資で穴埋めし膨れ上がった資本金、GC注記、監査法人の変更など過去倒産した新興上場企業でみられた典型的なケースだった。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年10月20日

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