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パナソニックCFOインタビュー。9年ぶりの赤字「コアとなる事業を示せていない」

新型コロナウイルス感染症拡大で大きな打撃を受けたパナソニック。2020年4―6月期連結決算は同四半期として9年ぶりに当期赤字へ転落したが、市場環境は徐々に回復しつつある。梅田博和取締役最高財務責任者(CFO)に課題認識や戦略を聞いた。

―足元の状況は。

「4―6月期はコロナ禍で需要が大きく減退した。ただ6月単独で見ると、住宅・角型電池事業の非連結化影響を除いた売上高は、前年同月比9割ぐらいまで回復している。業績が落ち込んだ車載機器は、欧州での開発コストが19年にピークとなっており、今後は収益向上が期待できる。航空機関連機器は、部品を共通化できる国内線のナローボディー機向けの提案を強化し、固定費を削減する」

―フリーキャッシュフロー(FCF)に関する考え方は。

「純利益以上のFCFを確保するのが大方針だが、チャンスがあればしっかり投資する。その際は、事業ポートフォリオの入れ替えで収入を見込みながら進める。在庫は4―6月にかなり増えたが、その後は正常化した。(資金の回収期間を示す)キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を意識して運転資金を管理する」

―住宅と車載用角型電池の事業を非連結化した狙いは何ですか。

「住宅事業の非連結化によって、CCCの短縮やネット資金(実質的な手元資金)の改善が進んだ。まちづくりというのは、資金の回り方が他の事業と全く違う。パナソニックグループの中だと、住宅事業の成長のために資金を回すことができない。角型電池事業も、自動車メーカーのスピード感に合わせて投資した方が、事業を拡大しやすい」

―“構造的赤字事業”への取り組みは。

「22年3月期までに400億円の営業赤字削減を目指していたが、太陽電池の(中国GSソーラーとの)協業の件が決裂したことで、100億円程度が先送りになった。テレビ事業は、7―8月は国内で好調だったが、事業としてボラティリティー(変動性)が非常に高い。協業や提携を鋭意検討する」

―今後の方向性は。

「コアとなる事業を示せていないと自覚している。コロナ禍で需要動向も大きく変化した。方向性は改めて社内外に発信したい」

パナソニックCFO・梅田博和氏

【記者の目/赤字事業の撲滅最優先】

成長の柱となるコア事業が見えない―。こうした声が社内外から聞こえてくる。かつては車載や住宅といった重点領域を示してきたが、経営環境や社会ニーズの変化は激しく、コロナ禍にも見舞われて、軌道修正を重ねている。成長の方向性を改めて示すためにも、足場固めとなる赤字事業の撲滅をやりきることが最優先だ。

(大阪・園尾雅之)
日刊工業新聞2020年10月2日

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