災害への備え、「トヨタの街」からEVの外部給電機能を普及させる!
トヨタ自動車やトヨタホーム(名古屋市東区)などと愛知県豊田市が連携し、災害時に電動車の外部給電機能の活用を促す新プロジェクトが動きだした。電動車と避難所のマッチングなど、外部給電を社会で有効活用できる仕組みづくりに9月下旬から順次着手する。これまで豊田市がほぼ単独で取り組んできたが市民への浸透が低いのが課題。頻発する天災への備えを強化するため民間を取り込み“クルマの町”ならではの普及活動を進める。(名古屋・山岸渉)
「豊田市発の取り組みとして、やがて日本全体に波及させていきたい」。太田稔彦豊田市長は17日の会見でこう力を込めた。従来の外部給電機能の普及啓発活動を発展させた「SAKURAプロジェクト」として、トヨタやトヨタホーム、豊田市内に拠点を持つトヨタ系販売会社8社を巻き込んで活動する。
外部給電機能の普及拡大に向けて重要視するのが「ふやす」「つなぐ」「つかえる」という点だ。販売店などで外部給電の普及啓発に力を入れるだけでなく、外部給電機能を持つ電動車と避難所を結び付ける。さらに外部給電機能を確実に使えるように体験の場を増やすなど“全方位”での活動が特徴だ。
例えば、電動車と避難所のマッチングでは外部給電車両の最適な配置に向けたアプリケーション(応用ソフト)を開発する。電源を喪失した避難所と、電動車の支援ができる自治体の公用車や販売店、市民らの車両などの情報をつなぐシステムを想定する。11月に実証実験を実施する予定だ。
電気自動車(EV)などの電動車や外部給電機能もさまざま出てきており、使い方の理解浸透も欠かせない。トヨタホームの外部給電システム「クルマde給電」などを9月末から順次、市内の低炭素社会モデル地区「とよたエコフルタウン」に導入する。市民向けに体験イベントや防災訓練などで訴求する。
太田市長は従来の活動について「行政中心で広がりを持てなかった」と分析。一方で「方向性は間違ってなかった。ここ数年の自然災害、新型コロナによって社会が(外部給電を)必要とする度合いが劇的に変わっている」と実感する。
実際、台風などの頻発する自然災害とともに新型コロナウイルスの影響で、避難所は感染リスクが高まる「3密」になる懸念がある。このためトヨタとデンヨーが共同開発した燃料電池(FC)電源車などを活用した給電の実証実験も計画する。空調用などの大容量電源として密を避ける避難所の運営に生かせるとみる。
「電動車は環境を守るとともに地域社会を守る車になる」(トヨタの豊島浩二トヨタZEVファクトリー副本部長)と環境変化の中で、外部給電機能の重要性はより高まっている。さまざまな活動を通じて、外部給電機能が災害時のインフラとして円滑に機能できることを期待する。