避難所のストレスを軽減!人道支援の国際基準対応の防災セット
ワエストロ(埼玉県熊谷市)は、抗菌・生活防水ウレタン畳・マット「くつろぎシリーズ 防災セット」の販売を始めた。難燃仕様の畳・マットが2枚、埼玉県内で共同開発するカネパッケージ(入間市)製の段ボールベッドと茶殻入り段ボールパーティションの計3点をパッケージ化した。人道支援の国際基準「スフィア基準」に対応し避難所の環境改善に役立てる。
ワエストロは住宅や店舗、病院、老人ホーム、保育園などで使用されてきた「くつろぎシリーズ」を防災用として本格的な販売を模索。複数の大学などから避難所が抱える課題をヒアリングしてアドバイスを受けながらスフィア基準に適した製品開発を進めてきた。
健康面でケア
災害時には近隣の自治体との連携が欠かせず、有事でも安定した製品供給を可能にしなければならない。これを踏まえ、同じ県内のカネパッケージに協力を依頼、わずか2カ月で製品化にこぎつけた。
畳・マットは普段使いができ、有事の際には避難所での防災用品として転用、避難所生活後にも再利用が可能だ。1枚当たりのサイズは縦1メートル×横1メートル×厚さ6ミリメートル。段ボールベッドの上にこれを2枚並べると、縦2メートル×横1メートルとなり、成人男性1人がストレスなく横になれる。
抗菌加工が施されているほか、液体や汚れが染み込まないので清潔に使用できる。そのため、避難所で課題となっている衛生面での問題に適用可能だ。高反発ウレタン素材で転んでもけがをしにくい高いクッション性もあって肉体的ストレスを軽減できる。ウレタン素材が持つ高断熱性から暑さや寒さ対策のみならず、吸音効果も期待され、健康面から被災者の生活をケアする。
自治体普及狙う
また、段ボールパーティションには茶殻が入っており、抗菌・消臭効果を付与している。避難者のプライバシーを守るだけではなく、新型コロナウイルス感染拡大に対しても「ウイルスの飛沫(ひまつ)感染対策として効果が期待できる」(古屋社長)とみている。
組み立ては箱を広げるだけで簡単、避難所の設営もスムーズにできる。販売先については災害時の避難所設営や運営を主導する自治体、企業、病院のほか、避難所に指定されている学校などを想定する。50セットから注文を受け付ける。
災害発生時の避難所生活は、長引けば長引くほど被災者の負担は大きくなる。新型コロナ感染拡大により、感染予防対策を含めた避難所の環境整備や改善が喫緊の課題にある。埼玉県では2019年10月の台風19号による豪雨被害など自然災害が増えており、地域の防災や減災への取り組みが求められている。
ワエストロは防災セットの販売開始に伴い、県内の自治体などとの防災協定締結を働きかけている。古屋社長は「災害時に迅速かつ安定的な物資を提供できる環境整備に取り組み、全国普及を促したい」としている。(さいたま編集委員・清水耕一郎)