売れるテレビは「大型」「高機能」だけじゃない!巣ごもりが需要を変えた
新型コロナウイルス感染拡大で生じた“巣ごもり消費”は、もともと堅調だった家電製品の販売の勢いの維持を下支えしている。先を見通せない状況が続く中でこの流れはどこまで続くのか、コロナ禍で引き合いが強まった製品の動向から探る。(2回連載)
調査会社のGfkジャパン(東京都中野区)によると、2020年1―6月の国内の家電・IT市場は前年並みの規模だった。デジタルカメラや携帯電話は新型コロナの影響で販売が落ち込んだが、音響・映像(AV)や個人向けパソコンが増えた。
特に販売が好調だったのが薄型テレビ。販売台数は前年同期比14%増の約300万台で、4Kテレビは同26%増に拡大した。大型で高機能なモデルを中心に伸びている。
以前から続く買い替え需要がベースにある。個人消費が冷え込む場面でも、家電の場合は「高付加価値な製品は景気に左右されず需要が根強い」(ソニーの高木一郎上席事業役員)側面がある。
そこに巣ごもり消費が加わり、高付加価値製品の販売を後押ししている形だ。政府による特別定額給付金の支給や東京五輪・パラリンピック需要の先送りを踏まえると、大画面製品の引き合いはまだしばらくは強そうだ。
景気影響を受けやすい中・小型モデルも、足元では巣ごもり消費がプラスに作用している。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、29型以下の出荷台数は7月に前年同月比30・7%増と大幅に伸び、8月も同23・9%増と好調を維持している。
複数世帯でテレビの個人利用のニーズが高まり、出荷台数の急増につながった。外出機会が減り娯楽の選択肢も限られる中、複数台の個人用テレビを置くことで家庭内のチャンネル争いを避けているようだ。
パナソニックは今夏に投入した小型ポータブルテレビの販売が好調。キッチンや寝室、風呂場などに自由に持ち運べる点が個人利用の需要を捉えた。東芝映像ソリューション(川崎市幸区)も個人利用を意識した24―40型の液晶テレビ新製品を投入している。縮小傾向だった中・小型テレビ市場が以前よりも活気を取り戻しつつある。