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仏政府が筆頭株主のタレス、「無人飛行体」実用化で日本企業に接近のワケ

部品などの品質力に期待、新マーケットの創出急ぐ
仏政府が筆頭株主のタレス、「無人飛行体」実用化で日本企業に接近のワケ

タレス・アレーニア・スペースが構想する「ストラトバス」のイメージ

民間航空、宇宙、交通システムや防衛システムなどを手がけるフランスの大手企業タレスは世界初の無人飛行体「ストラトバス(成層圏バス)」を実用化する計画を進めている。タレスジャパン(東京都港区)のシリル・デュポン社長は実用化の時期について「2、3年以内を目指している。企業や政府機関などからのニーズは高い」と明かす。すでに日系企業が部品の応札に参加するなど、関心を寄せているという。

同社グループのタレス・アレーニア・スペースが構想する飛行体は成層圏で飛行するため、風の影響は受けにくいのが特徴という。無人のため昼夜を問わず飛行できるほか、上空での静止も行える。太陽光パネルを備える。さらに、森林火災など自然災害で地上の通信システムが利用できない場合、機体に搭載した設備を通じて、復旧に役立てることができるとしている。

同社長は「宇宙分野ではデジタル化の進展が急激に進んでおり、衛星を発射後に新たなミッションが追加となる可能性が高い」と予測し、「これまで培った通信や宇宙分野などでの技術を活用できる」とする。

タレスはパリに本社を置き、世界68カ国で事業を展開。従業員は8万3000人。研究開発費は10億ユーロ(1250億円)に上る。民間航空の機内エンターテインメント・システム、サイバーセキュリティー、防衛、交通システム、宇宙関連システムなどの事業分野を有する。日本法人は2020年、設立50周年となる。同社は13年、理化学研究所(理研)から500テラワット(1テラは10億キロワット)の高出力レーザー2ラインを受注。15年には三菱重工業、三菱商事、日立製作所、近畿車両の4社と組み、カタールの首都ドーハの鉄道プロジェクトを受注した実績などがある。

デュポン社長は「日本企業の製品は品質が高く、タレスが持つネットワークを活用することで、第3のマーケットを創設することができる」と日本企業に協業強化を呼びかける。

日刊工業新聞2020年9月22日

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