ポスト安倍外交「中国を変える可能性を探ることが国際的な信頼にもつながる」

関西国際大学教授(慶応義塾大学名誉教授)渡辺頼純氏に聞く

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安倍首相と次期首相の有力候補・菅官房長官(首相官邸公式ページより)
―第2次安倍政権の通商戦略での成果は。

「日本が通商大国の道を歩み、世界で立ち位置を明確にした点が大きい。特に農業を中心に賛否が分かれた環太平洋連携協定(TPP)への参加を表明した2013年は、日中韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の動きもそろい踏みし、『メガFTA元年』と言ってもいい。それを受けて19年には日EU経済連携協定(EPA)の発効にも至った。17年に米国がTPP交渉を離脱したが、例外領域を設けつつルール作りを主導してきた」

―米国との関係では、大統領選の結果次第で通商政策が変わる可能性があります。

「バイデン氏が属する民主党の原則論を踏まえて考えると、自由貿易志向になるかといえばそう簡単ではない。むしろトランプ氏が再選した時のほうが日本としては予見可能性が高い。彼のやることが正しいと言えないが、1期目で中国、メキシコなどに厳しく出た分、2期目はレガシー(遺産)を残すために通商体制の立て直しに出るかもしれない」

―複数国間の連携も重要性を増してます。

「TPPでのタイやフィリピンなど新たな国の参加によるネットワーク拡大が大きな意味を持つ。5月の中国の全人代(全国人民代表大会)で李克強首相が参加に前向きな可能性を示したが、中国でTPPに関する研究が進んでいる表れだ。日本は安全保障で米国との関係が強い一方、経済面で中国と緊密な関係にある。TPP11を主導した日本がルールとして民主主義、法の支配、人権、市場経済の原則を普遍的価値として全面に示しつつ、中国を変える可能性を探ることが国際的な信頼にもつながる」

―一方で保護主義の風潮も広がってます。

「チャイナプラスワンの流れが生じて以降日本とASEAN(東南アジア諸国連合)各国との関係が強まり、TPP11やRCEPを含めた重層的な地域経済連携の構造が出来上がった。かつて農業を中心に消極的だった日本の通商政策は、今では保護主義に立ち向かうまでになっている。その上で二国間、複数国間の連携をさらに推し進めることが重要だ」

―次期首相に求められる姿勢は。

「年内にはG20(20カ国・地域)サミットに加え、G7(先進7カ国)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議など多国間外交が次々控えている。相手と丁々発止のやりとりが必要な多国間外交には、『場慣れ』や各国首脳との『ケミストリー(化学反応)』が必要だ。安倍外交は長期政権によってリーダーシップや存在感を高めてきた。これを維持、継承できるかが最大のポイントではないか」 (聞き手=高田圭介)

渡辺頼純氏

日刊工業新聞2020年9月9日

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