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【サントリーHD社長・新浪剛史】日本よ、面白い若者をもっと経営に参画させよう

コロナ禍でオンライン会議がコミュニケーションツールとして普及した。私も活用している。バーチャルではあるが、社内の多様な層と直接対話がしやすくなった。今までは米国の子会社ビームサントリーなど海外現地に赴いて対話してきたが、実際に会うのは現地のトップや役員クラスが中心となる。

オンライン会議ではメンバーも参加してもらいコミュニケーションを行っている。5―6人の少人数だから、欲を言えば、リアルに会って心を探る議論をしたいが、バーチャルでもやらないよりはやった方が圧倒的にベターだ。

経営者にとって従業員との対話は今後ますます重要になる。新型コロナウイルスという見えない敵を前に従業員が将来に不安を感じているからだ。従業員の安全・安心、健康が第一だというメッセージを社長が直接発信し、元気づけなくてはいけない。従業員の家族の安心にもつながる。

これまでなかなかコミュニケーションがとれなかった工場の従業員とも対話している。コロナ禍でも総合酒類食品メーカーとしての供給責任を果たす上で、彼らは社会機能の維持に貢献してくれている。感謝の気持ちを込めて私自らが対話するようにしている。危機の時に頼りになるリーダーなのか、会社なのか。そんな不安を払拭(ふっしょく)しないといけない。

経営者は今後、従業員のリカレント教育(社会人の学び直し)にも深く関わっていく必要がある。デジタル変革(DX)を進めるにつれ、機械ができることは機械に任せ、人にしかできないことは人が突き詰めていくことになる。

そこでリカレント教育が注目されているわけだが、DXは経営の根幹であり経営者直轄で進める必要があるため、誰に何を学んでもらうか、経営者はリカレント教育の定義づけに積極的に関与しなくてはいけない。

例えばデータの分析自体は専門性が高いので求めてはいないが、ある程度分析されたデータをどう解釈するかというスキルは必要になってくる。そのために、回帰分析の基礎を習得してもらうといったようにだ。

コロナ禍で若い世代の重要性を再認識した。変化に対するリスクの取り方の難しさをコロナ禍は突きつけている。リスクに対する柔軟性は若い世代の方が高い。しかし、歴史も大切で、歴史を熟知した老年も必要だ。「老・壮・青」のバランスを改めて考え直す必要がある。

日本は老年や壮年の経営者が多い。もっと青年が参画する経営があってもいい。明治維新や戦前は若い経営者が活躍していた。日本には若い世代が活躍できるDNAがあるはず。今は平時ではない。面白い若者を経営に参画させる勇気が今の経営者に求められているのではないか。

日刊工業新聞2020年8月20日

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