出生前診断ー正しい情報を知ることの意義を、あなたはどう考える?
晩婚化・晩産化で先天異常のリスク高まる
「出産」と「中絶」異なる決断をした二組の夫婦のケーススタディー
GE REPORTS JAPAN編集部は、夫医師の診断のもと、出産・中絶という異なる決断をした二組の夫婦に話を聞いた。同じように双子を授かり、それぞれに非常に難しい状況の中で異なる結果となった。しかし、状況が全く違っても、そこに共通していたのは「正しく知りたい」という強い思いである。
Aさん夫婦の場合、当初通っていた病院で受けたおなかの赤ちゃんの診断は水頭症。双子のひとりが胎内で亡くなったことでもう一人の子の脳に影響が出ているようだ、ということだった。それなら障害が残っても頑張って産んで育てよう、と考えていたものの「どんどん状況が悪くなっている」と聞かされ、しかし医師からは満足のいく情報が得られず徐々に不信感に繋がっていったと言う。
夫婦にとって、待ちに待ってやっと宿った大切な命。藁にもすがる思いでクリフムを受診したところ、判ったのはさらに深刻な結果。双子のうち存命だった子は、脳の組織が破壊されて、脳がほとんどなくなっている状態だった。それは水頭症というようなレベルとは全く違う話。
「たとえ生まれることができたとしても、壮絶な人生が待っている」ー。その現実に、夫婦は断腸の思いで中絶を決断した。夫は「でも、ちゃんとしたことを聞けてよかったと思ったのも確か。現実は、いままで他院で聞いていたこととは違った。しかしそれが正確なことだし、はっきりと目で見られ説明を聞けてよかったというのがそのときの気持ちです」と振り返える。
正確な情報があってはじめて、きちんと向き合うことができる
Aさん夫婦は、当初受けた「水頭症」という診断について、インターネットでさまざまな情報を集めたと言う。しかし「最初の出発点が間違っていれば、その後どんどん必要のない情報ばかりを集めてしまいます。その結果に基づいて誤った決断を下してしまったら一生取り返しがつきません」(夫医師)
Bさん夫妻も双子で、他の病院でTTTS(双胎間輸血症候群)の疑いがあると診断され、クリフムを受診した。夫医師と話して、それまでの葛藤が解消されたように感じたと言う。「肩の力が抜けたのは、産むのが当たり前ではなく、選択していいとわかったから。それまでは選ぶことは親のエゴだ、というように感じていたからです。義務を押しつけられるのではなく、自分の意思で選択できる、ということが理解できたんです」(B夫妻)。
診断の結果TTTSではないことがわかり、妊娠を継続することを決たが、状況は決して楽観できるものではなかった。「ふたりとも亡くなる」「ひとりが亡くなって、生まれた子に障害が残る」「ひとりが障害を持ち、もうひとりの健常な子とともに育てていく」など、いくつかの可能性があり、そのどれもが明るいものではなかった。
産むと決めたのは、まさにあらゆるマイナスの可能性を考えて、悩み抜いた末のことだった。その後、双子のうちひとりは残念ながら亡くなった。しかし、もうひとりの子供は無事に生まれ、元気に成長している。
Bさん夫妻は、診断用画像を見て、赤ちゃんの存在を強く実感できたと言う。「カラーで、3D、 4Dで見られる。見えることで、確かに子供がいるんだということを、胎動がなくても感じられたんです。白黒のエコーだと顔の表情がわからない。鮮明な画像を見て、ああ、ちゃんといるなぁ、と分かりました」(主人)。
夫妻は、どのような決断であっても胎児の画像を見て決めるべきと言う。夫は「仮に産まないという決断をしたとしても、親子としての人間関係をそれではじめて考えられるんじゃないかと思うんです。お腹の中に来た段階で、自分たちの子供です。私の場合は、産む・産まないの選択ではなく、お腹の中の子供に何が起こっているか、自分たちに何ができるかを知りたかった」と当時の気持ちを振り返る。