コロナ禍で際立つ中国向け輸出、7か月ぶりに前年同月比で増加
中国向け輸出が7カ月ぶりに前年同月比で増加に転じた。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった1月以来マイナスが続いていたが、財務省が19日発表した貿易統計速報では同8・2%増を記録。世界経済の停滞が続く中で、中国市場の好調さが際立つ。日本企業にとっても対中国ビジネスが業績を牽引(けんいん)することになりそうだ。
中国の自動車市場は回復傾向が続く。中国汽車工業協会によると7月の新車販売台数は前年同月比16%増の211万台。5月以降は3カ月連続で同10%超の増加が続く。中でも日系自動車メーカーの復調は鮮明だ。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の3社は7月の中国販売台数として過去最高を記録。ホンダの倉石誠司副社長は中国政府による消費刺激策で市場はほぼ通常レベルに回復しているとし、「年度では前年度を超える販売を目指したい」と話す。
半導体製造装置も好調だ。第5世代通信(5G)関連など半導体需要が底堅く、メモリー、ロジック、半導体受託製造(ファウンドリー)とも投資を活発化。東京エレクトロンは半導体製造装置の中国向け売上高が4―6月期に前年同期比2・7倍。年後半に向けてもファウンドリーの投資拡大を予想する。
SCREENホールディングスも同装置で中国と台湾向けが堅調という。同装置の4―6月期の受注高は430億円。このうち半分程度が中国向けだ。
非鉄金属では銅地金が伸びたもよう。JX金属は、中国向けの電気銅の輸出が前年同期から増加した。中国での需要回復に加え、コロナ影響によるチリからの供給減を、日本からの輸入で補ったことなどが主な要因だ。
中国全体で投資意欲が高まる中、工作機械も中国向けが回復。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた6月の工作機械受注実績は、中国向けが前年同月比34・2%増の154億円と28カ月ぶりに増加に転じた。主要メーカーの7月受注実績も中国向けが牽引し、前月比ベースで5カ月連続の増加となることが確実だ。
中国向け回復軌道 野村証券シニアエコノミスト・桑原真樹氏
中国は早期にロックダウン(都市封鎖)に踏み切り、いち早く解除し経済活動を再開した。そのため需要が伸び、日本からの輸出も増加した。設備投資も再開し、7月は機械の輸出が増えた。個人・企業向けがともに立ち上がり、今後全体的に回復するとみる。
中国だけでなく、米国向けも伸びている。物価・季節変動を除く7月の米向け輸出総額は前月比だと43.9%増。自動車はかなり持ち直した。7月に急増したためペースダウンすると思うが、ゆるやかに回復するだろう。
しかし欧州と、中国を除くアジアは伸びておらず、ここで輸出が回復するかどうかが今後のポイントだ。(談)