ヒトの痛みを軽減するAI活用システムの仕組み
国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の脳情報通信総合研究所と情報通信研究機構の脳情報通信融合研究センター(CiNet)は、人工知能(AI)とヒトが互いを訓練するシステムを開発し、ヒトが感じる痛みの軽減に成功した。英ケンブリッジ大学や英オックスフォード大学などとの共同研究。病気やけがの治療後に続く痛みを、脳の信号の制御で抑える新しい治療法として応用を目指す。
まず、参加者19人とAIが互いを訓練し、ヒトの脳活動の変化を調べた。AIは参加者の手に電流で痛み刺激を与え、脳活動からヒトの感じる痛みの強さを解読。強い痛みを感じた脳活動がみられた刺激を選択しないよう学習する。一方、ヒトの脳では神経へ信号を送る小さな領域の精度が上がり、痛み刺激の伝達を調節する能力が高まった。
次に、別の28人の参加者の一部だけAIとの訓練を行った。訓練を受けた参加者は、強い刺激の後に刺激が少しでも弱まると痛みの感覚が大幅に減少する「オフセット鎮痛」の効果が高まった。
今後、簡便性や精度の向上、患者が負担なく訓練できるよう仮想現実(VR)の導入などで実用化を目指す。
日刊工業新聞2020年8月18日