ニュースイッチ

今、"農業女子"がなぜうけるのか

リケジョやドボジョに続く注目女子。市場活性化へ新しい発想や手法に期待高く
今、"農業女子"がなぜうけるのか

井関農機の農業女子トラクター(同社ホームページより)


農水省のプロジェクトに参画企業続々


日刊工業新聞2014年10月22日「社説」


 理系の女性(リケジョ)や、建設現場で活躍する女性(土木系女子=ドボジョ)などと並んで“農業女子”が注目されている。わが国の農業従事者の半数は女性。女性の活躍は、高齢化と後継者不足に悩む国内農業がこの先、存続していくために重要な意味を持つ。

 こうした中で、農林水産省が2013年11月に立ち上げた「農業女子プロジェクト」の参加企業が徐々に増えている。企業の取り組みが、農業に新しい市場と可能性をもたらすことを期待したい。

 同プロジェクト参加企業は13社。井関農機やサカタのタネなど、一見して農業関係と分かる企業ばかりではない。ダイハツ工業やコーセー、三越伊勢丹ホールディングス、エイチ・アイ・エス、タニタ(東京都板橋区)、東急ハンズ(東京都新宿区)、レンタルのニッケン(東京都千代田区、三菱商事系)、日本サブウェイ(東京都港区、サントリー系)など多彩だ。

 農業現場の女性の視点として企業が求めているのは、ファッション性や働きやすさ、食品素材の安心・安全やヘルシー性など。女性目線の農業用軽トラックや仮設トイレ、日焼け止めの化粧品など多くの分野で商品開発が進んでいる。女性を対象にした商品開発や市場戦略は今に始まったことではないが、農業女子にこだわることで企業にとっての新たな市場が生まれるのではないか。

 若い人が農業に魅力を感じない理由の一つが「泥で汚れる」、「服装がファッショナブルでなくてかっこ悪い」というものだった。ユーザーの不満は、そのまま製品開発ニーズになる。農業で働く女性の視点を取り入れて製品開発することは、自社商品の市場を広げることに直結する。コーセーの場合、自社の化粧品ブランドのサイトに農業女子を登場させたり、化粧品を農業女子に使ってもらい感想を聞いたりして、新たな商品開発に生かす考えだ。

 また流通やサービス分野の企業は、農業が持つ“自然とのふれあい”や“ヘルシー”、“新鮮食材”などの好イメージを商品販売に結びつけることを狙っている。自然野菜を使った限定メニューや、農業体験の宿泊プランなどが生まれている。日本の農業を間近で見たい外国人観光客などの需要も見込めるかも知れない。

 農業従事者の半数は女性だが、平均年齢は66歳を超えており世代交代が急務だ。若者や女性に魅力が感じられなければ、政府がどんなに支援策を講じようとも農業の衰退は避けられない。ITの活用や植物工場などで企業の力を生かすのも一つの方法だが、農業女子というキーワードで市場を活性化するのも大いに意味がある。
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
「○○女子」との言い回しが流行っているようですが、「農業女子」もあるとは。

編集部のおすすめ