バングラデシュなら病院の建物管理、ブルキナファソなら殺菌剤
JICA、途上国が求める技術をHPで公開。ODAを活用した中小企業の海外展開を支援
国際協力機構(JICA)が中小企業の政府開発援助(ODA)事業活用を促すため、途上国で有望な技術・製品情報をホームページで公開した。バングラデシュなら病院の建物管理、ブルキナファソなら殺菌剤といった具合だ。JICAのODAを活用した中小企業支援は4年目に入る。全国規模に普及しつつあるが、情報公開で一段と利用企業を増やしたい意向だ。
**国と課題を明記
JICAが公開した情報は「民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題」。環境・エネルギー、廃棄物処理、水処理、福祉、農業など9項目に分かれており、水処理をクリックすると、ベトナム、バングラデシュ、メキシコなど国別の情報が記されている。
例えばベトナムなら、「管路内浄化システム」と「非開削の下水道管路更正工法」が有望製品・技術に挙がる。ベトナムは首都ハノイでも下水道の普及率が12%程度にとどまり、経済発展に下水処理の整備が追いついていない。その上、ハノイやホーチミンは都市化の進展で下水処理施設を建設するスペースが十分になく、管路内だけで浄化できるシステムや開削しなくても更正できる工法が求められている。
情報には具体的な地域名と課題を盛り込むほか、ベトナムの場合なら「人民委員会」や「天然資源環境省」が関連する公的機関と明記。どこに自社製品を提案すればよいか、分かるようにした。
JICAがこうした情報を公開する背景には中小企業への情報提供を手厚くするのみならず、日本貿易振興機構(ジェトロ)や中小企業基盤整備機構(中小機構)など他の中小企業支援機関との役割を明確にする意味合いがある。
**「途上国に役立つか」と「企業が成長できるか」
JICAの支援事業には、企業の途上国での事業化調査を手助けするものや、途上国の事情に精通する専門家に現地の投資環境を聞くものなど、ジェトロなどと類似している場合がある。一番の違いは、外務省系のJICAは企業の製品が「途上国に役立つか」が重要なのに対し、経済産業省系のジェトロや中小機構は海外展開で「企業が成長できるか」に重点を置いていることだ。
要はJICAの場合、途上国が必要としない製品なら支援できないため、まずホームページを参照しながら途上国のニーズを把握し、ビジネスプランを練る必要がある。
JICAがODAを活用した中小企業の海外展開支援が全国に広がっている。途上国での調査事業などに採択された企業は延べ321社(8月時点)にのぼり、佐賀、青森、栃木、和歌山を除く43都道府県の企業に広がった。事業終了後のアンケートでは、8割の企業が途上国でビジネスを継続していると答えており、JICA事業が中小企業の海外展開に一定の役割を果たしていると言えそうだ。
JICA事業の採択案件には、レアックス(札幌市東区)の特殊カメラを使ったボリビアでの井戸診断調査、トマス技術研究所(沖縄県うるま市)のインドネシアでの小型焼却炉の普及調査など、北は北海道から南は沖縄まで含まれる。
**途上国で事業、8割が「継続」
JICAが2014年度に事業を終えた企業にアンケートしたところ、108社のうち途上国で事業を継続していると答えた企業は87社(約80%)にのぼった。一方、断念したと答えた企業は18社(約16%)だった。
事業を継続している87社にビジネスはどの段階にあるかを尋ねたところ、「現地法人・現地支店・駐在員事務所を開設済み」と答えた企業は23社(26%)と、4分の1を占めた。「拠点開設を計画している」と答えた企業は37社(42%)あり、合わせて7割近くの企業が事業終了後に途上国進出を果たす見込みであることがわかった。
また「現地生産を開始した」と答えた企業が17社(19%)、「現地生産を計画中」60社(68%)とあわせると9割近くが何らかの形で現地に生産拠点を置く見込みであることも判明した。
一方、終了後に事業を断念したと答えた企業に理由を聞いたところ、「規制などでビジネス環境への対応が困難」(11社)や「戦略が立てられない」(8社)、「資金不足」(7社)、「適切な人材が見つからない」(6社)などが挙がった。
アンケートから、JICA事業を活用する企業は途上国進出の意思が明確にあり、事業を足がかりに次のステップに進む企業が多い。もう一歩で途上国に進出できそうな企業は、果敢にチャレンジするとよさそうだ。
**国と課題を明記
JICAが公開した情報は「民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題」。環境・エネルギー、廃棄物処理、水処理、福祉、農業など9項目に分かれており、水処理をクリックすると、ベトナム、バングラデシュ、メキシコなど国別の情報が記されている。
例えばベトナムなら、「管路内浄化システム」と「非開削の下水道管路更正工法」が有望製品・技術に挙がる。ベトナムは首都ハノイでも下水道の普及率が12%程度にとどまり、経済発展に下水処理の整備が追いついていない。その上、ハノイやホーチミンは都市化の進展で下水処理施設を建設するスペースが十分になく、管路内だけで浄化できるシステムや開削しなくても更正できる工法が求められている。
情報には具体的な地域名と課題を盛り込むほか、ベトナムの場合なら「人民委員会」や「天然資源環境省」が関連する公的機関と明記。どこに自社製品を提案すればよいか、分かるようにした。
JICAがこうした情報を公開する背景には中小企業への情報提供を手厚くするのみならず、日本貿易振興機構(ジェトロ)や中小企業基盤整備機構(中小機構)など他の中小企業支援機関との役割を明確にする意味合いがある。
**「途上国に役立つか」と「企業が成長できるか」
JICAの支援事業には、企業の途上国での事業化調査を手助けするものや、途上国の事情に精通する専門家に現地の投資環境を聞くものなど、ジェトロなどと類似している場合がある。一番の違いは、外務省系のJICAは企業の製品が「途上国に役立つか」が重要なのに対し、経済産業省系のジェトロや中小機構は海外展開で「企業が成長できるか」に重点を置いていることだ。
要はJICAの場合、途上国が必要としない製品なら支援できないため、まずホームページを参照しながら途上国のニーズを把握し、ビジネスプランを練る必要がある。
JICAがODAを活用した中小企業の海外展開支援が全国に広がっている。途上国での調査事業などに採択された企業は延べ321社(8月時点)にのぼり、佐賀、青森、栃木、和歌山を除く43都道府県の企業に広がった。事業終了後のアンケートでは、8割の企業が途上国でビジネスを継続していると答えており、JICA事業が中小企業の海外展開に一定の役割を果たしていると言えそうだ。
JICA事業の採択案件には、レアックス(札幌市東区)の特殊カメラを使ったボリビアでの井戸診断調査、トマス技術研究所(沖縄県うるま市)のインドネシアでの小型焼却炉の普及調査など、北は北海道から南は沖縄まで含まれる。
**途上国で事業、8割が「継続」
JICAが2014年度に事業を終えた企業にアンケートしたところ、108社のうち途上国で事業を継続していると答えた企業は87社(約80%)にのぼった。一方、断念したと答えた企業は18社(約16%)だった。
事業を継続している87社にビジネスはどの段階にあるかを尋ねたところ、「現地法人・現地支店・駐在員事務所を開設済み」と答えた企業は23社(26%)と、4分の1を占めた。「拠点開設を計画している」と答えた企業は37社(42%)あり、合わせて7割近くの企業が事業終了後に途上国進出を果たす見込みであることがわかった。
また「現地生産を開始した」と答えた企業が17社(19%)、「現地生産を計画中」60社(68%)とあわせると9割近くが何らかの形で現地に生産拠点を置く見込みであることも判明した。
一方、終了後に事業を断念したと答えた企業に理由を聞いたところ、「規制などでビジネス環境への対応が困難」(11社)や「戦略が立てられない」(8社)、「資金不足」(7社)、「適切な人材が見つからない」(6社)などが挙がった。
アンケートから、JICA事業を活用する企業は途上国進出の意思が明確にあり、事業を足がかりに次のステップに進む企業が多い。もう一歩で途上国に進出できそうな企業は、果敢にチャレンジするとよさそうだ。
日刊工業新聞2015年10月12日 中小・ベンチャー・中小政策面