こだわりはデザイン、町工場の感染対策商品が面白い
新型コロナウイルス感染拡大を受け、中小製造業がマスクや飛沫(ひまつ)防止パネルなどの製作に参入する事例が相次いでいる。職場や学校、飲食店、商業施設などあらゆる場所で感染対策が必要となる「ウィズコロナ」の中で、機能だけでなく暮らしに溶け込むデザインを取り入れた製品も出てきた。(取材=南東京・増田晴香)
極東精機製作所(東京都大田区)は、消毒液を約5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)に微粒子化し散布するポール型噴霧器「ミストブラスター」を開発した。銀色の本体に青色の発光ダイオード(LED)を取り入れ、清潔感があり、スタイリッシュな製品を実現した。
4月に開発に着手し、デザインから設計、製作まで一貫して社内で行った。もともと電気スタンドなどBツーC(対消費者)向け製品のアイデアとして社内で着想していたデザインを採用した。鈴木亮介専務は「一見噴霧器に見えない。これは何だろう、と近づいてもらえる見た目にしたかった」と話す。
引き抜き鋼管を製造する玉川パイプ(東京都大田区)は、区内企業など16社と協力し、足踏み式アルコール消毒液スタンド「STEPON(ステップオン)」を商品化した。液だれ防止トレーや土台を円形にした。試作品を医療機関などに寄贈し、使用した意見を基に改良。使い勝手や安全性を考慮し、全体的に丸みを帯びたデザインに決定した。
長く使用されることを想定すると、品質や耐久性だけでなく「場所の雰囲気を壊さないことも重要」(玉川大輔社長)。今後は設置する場所のイメージに合わせた特注仕様も検討する。「細かい変更も町工場は臨機応変に対応できる」(同)と強みを話す。
佐藤製作所(東京都目黒区)が発売したドアオープナーは磨きによる表面の美しさや職人による手作り感が好評だ。抗菌性のある純銅、真ちゅう製で、直接触れずにドアの開閉、ボタンや加圧式タッチパネルの操作などに使用できる。バフ研磨で光沢を出した最高級モデルは4500円(消費税込み)で販売。イニシャルを刻印し、専用ケースも販売する。佐藤修哉常務は「安価な量産品も出ているが、当社では一つ一つ手作業で高品質に仕上げている」とする。
感染者数が増加し、対策製品も一時的ではなく生活の一部となってきた。それだけに心の豊かさを保つためにデザインは重要な役割を果たす。モノづくりにこだわってきた町工場にとって腕の見せどころといえそうだ。