6月に時価総額で初めて総合商社トップになった伊藤忠、社長が見極める「新常態」
―コロナ禍での経済環境をどう見ますか。
「4―6月期は新型コロナウイルスの影響を強く受け、7―9月期に少し緩和し、下期以降に回復するという前提で2021年3月期の業績見通し(当期利益4000億円)を開示した。コロナ禍での減益インパクトを織り込みながら、おおむね計画通りに推移している。上期では機械関連は足元でモノが売れても、受注活動が十分ではないケースがあり、今後を注視していく。情報・金融や食料は影響が比較的少ない」
―米中における事業環境は。
「中国の国内総生産(GDP)成長率は1―3月期にマイナスとなったものの、景気は4月から回復基調にあり、伊藤忠総研では20年は2%台の成長を予想している。実際に、中国ビジネスは1―3月期が最も厳しく、4月から徐々に需要が戻っている。一方、北米では建材関連が(ステイホームによる)住宅の改修ニーズがあり、堅調に推移している。大統領選を控え、トランプ米大統領は景気刺激策を行っているが、新型コロナウイルスの感染拡大で7―9月期は景気が減速する可能性もあるだろう」
―デジタル化への対応はどうですか。
「消費生活分野ではファミリーマートが起点となり、事業、商流それぞれでデジタル変革(DX)を加速していく。アパレル業界ではコロナ禍で対面による展示会が一部で行えない状況だが、当社ではブランド卸オンラインプラットフォーム運営の米JOOR(ジョア、ニューヨーク州)と提携し、事業展開している。最近ではブランド・小売り向けに、展示会のオンライン化の支援を進めており、足元での引き合いも急速に高まっている」
―6月に時価総額で初めて総合商社トップになりました。
「稼ぐ、削る、防ぐを徹底し、企業価値を落とさないことが大事だ。新型コロナがもたらしたニューノーマル(新常態)の世界で、どの領域が伸びるかをしっかり見極める必要がある」