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ベテランの違和感をAIで検知

品質検査AIサブスク提供
ベテランの違和感をAIで検知

写真はイメージ

【匠の直感再現】

テクムズ(名古屋市中村区)は、品質検査人工知能(AI)サービスを開発に力を入れる。東京都が主催するスタートアップ支援事業「NEXsTOKYO(ネックストウキョウ)」に採択され、将来を有望視される注目の企業だ。目指す品質検査の精度は、ベテランが感じる違和感をAIで検知すること。「第六感」と位置付ける匠(たくみ)の直感再現を目指す。

「10万円のサブスクリプションだ」と笑顔を見せる鈴木孝昌社長。鈴木社長が自身の手で作り上げた品質検査AIサービス「DEEPS(ディープス)」は、20個の不良品を読み込むだけで90%以上の精度を持つ品質検査システムを、たった2時間で構築。

顧客は10万円の利用料を毎月テクムズに支払う。得意とする材質はゴムだが、樹脂や金属、食品も可能。より精度を高くすることもでき、最上級レベルの場合は不良品が出る原因追及まで可能という。

鈴木社長は技術畑出身。20年以上、製造業に携わった経歴を持つ。品質管理や生産技術の仕事をする人間の言葉、価値観を理解し、素材ごとに話ができるため、顧客からは「現場を分かっている。安心する」と評価を受ける。

得意は撮影と照明。専門の部隊を社内に抱え、どのような傷でも逃がさない撮影技術力を持つ。

一方で、自社で品質検査のシステムを組みたいとの声を聞き、技術トレーニング事業も開始。ディープスを活用し、顧客が自社でシステム構築ができるよう、使い方や得意の撮影方法を鈴木社長自身が伝授する。顧客はディープス利用料のみで、自社の検査システムを構築できる。

【東南アジア進出】

ディープスの引き合いはすでに多い。現在6社に導入、300社近くから問い合わせがあった。背景には新型コロナウイルス感染症の拡大がある。

日本企業の最大の強みは「高品質」。海外工場で生産した商品であっても、品質検査は日本式がほとんどだ。しかし新型コロナ拡大で現地工場に人材を派遣することが困難に。これを受け同社は、「今年の後半には東南アジア市場進出を目指す」(鈴木社長)ことを決意。中でも日系企業の進出が多いタイやベトナム、インドネシアの市場を狙う。

そして目指すは「3年後をめどに、社員5人で上場」。そして最終的な目標は「農業の全自動化」。農業の自動化はモノづくりの中で最も難しいと考えられており、鈴木社長は「野菜や果物の品質検査だけでなく、農業の全工程を自動化することが夢」と意気込む。

(名古屋・浜田ひかる)
日刊工業新聞2020年7月16日

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