歌舞伎公演の大幅値下げへ、コロナ直撃の御園座が価格見直し
御園座は主催する歌舞伎公演のチケット価格を大幅に引き下げる方向で調整に入った。まず10月に開催予定の顔見世興行について、「S席」を前年比約6割低い1万円を下回る価格にする方針で製作会社などと交渉する。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした公演規模縮小によるコスト低減を提案する。歌舞伎初心者でも食指が動く価格に見直し、若者など個人客を取り込む。
御園座は例年4月と10月に歌舞伎公演を主催。10月は顔見世興行を恒例としており、2019年10月のチケット価格は6000―2万4000円だった。20年はそれを3000―9000円に引き下げることを目指し、松竹などと交渉する。
顔見世興行は例年、25日間50回公演の規模で開催し、出演者は東京・大阪方面から200人以上が集まる。今年は新型コロナ感染拡大防止の観点からも演目や公演期間を縮小し、出演者も減らすことで製作費を抑える考え。観客動員は総座席数の半分の600人程度に抑える。
御園座の宮崎敏明社長は「(新型コロナを機会に)原点に返って、歌舞伎を見たことのない方にも見てもらえるような価格にしたい」と強調。今回の成果を見て、今後の歌舞伎公演の価格引き下げを検討する。また歌舞伎以外の公演についても値下げ検討の対象とする。過去の経営再建を通じて固定費を圧縮したことを生かし、全体のチケット価格を見直して顧客層の拡大を図る。
インタビュー/御園座社長・宮崎敏明氏 いいものを安く、価格見直す時期
2018年4月に新劇場が開場し、真価が問われる3年目に新型コロナが直撃した御園座。宮崎敏明社長に現状や今後の見通しを聞いた。(名古屋・岡林里奈)
―新型コロナの影響は。
「4月以降の公演はすべて中止。4カ月も休んだことはかつてない。ただ(13年に閉館した)旧劇場の時は、1カ月のキャッシュアウトが2億円を超えていたが今はその10分の1。経営をスリム化したことで(追加の)借り入れをせずにやれている」
―いつから再開できますか。
「8月の『吉本新喜劇』から再開する予定で、独自の感染対策ガイドラインの作成など準備を進めている。当面は、お客さまを半分ぐらいに抑えるが経費などをコントールすれば利益は出る。逆に粗利益が出ないような公演はやめる」
―コロナ下での今後の方針は。
「『いいものを安く』が基本だが、個人客に買ってもらうには価格が高い。ちょうど見直す時期にきていた。コロナによって今は固定概念にとらわれずに交渉できる機会。これまで単価の高い歌舞伎の利益をあてにしがちだったが“ホームラン”は、もういらない。コツコツ(利益を)積み上げる形に変える」
―営業黒字化(20年3月期は2億円の赤字)のめどは。
「(21年3月期は)下期に限れば、チケットの買い控えもあるだろうが、なんとか黒字確保できると思っている」