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醤油製造に不可欠な甘酒でジェラート作り、ストーリー性で訴求

お取り寄せ需要取り込む

しょうゆや粉末調味料などを手がける日本丸天醤油(兵庫県たつの市、延賀海輝(のぶか・みなき)社長、0791・72・3535)は、2月にジェラートのブランド「ヤサシクジェラート」を立ち上げた。現在は「抹茶」「チョコレート&珈琲」など5種類をインターネットサイトで販売する。しょうゆ製造に不可欠な甘酒を使うことで、自社のオリジナル性を打ち出している。

1795年(寛政7)の創業から220年以上の社歴で初めてスイーツを開発した。延賀社長は食事の西洋化や国内の少子高齢化により、今後長いスパンでしょうゆ消費量が減ると予想する。新たなしょうゆ商品を開発しても「家庭の味を変えるのは難しい」(延賀社長)とみる。そこで好物であるアイスクリームに、しょうゆ製造でまろやかさと濃厚さを出すために加える甘酒を使えないかと考え、15年にジェラートの開発をスタートした。

ジェラート作りに大切なのは絶妙な水分量だ。ただ、甘酒の水っぽさとフルーツの水分が合わさることで「物性が壊れるとおいしくない」(同)。そのため原料の油分とのバランスが難しかった。さらに外部視点としてパティシエによる味のチェックを受け、試行錯誤の末に完成させた。

販売するのはミルクや黒豆きなこなど5種類。ミルク2個と他の4種類が1個ずつの計6個入りの価格は4000円(消費税込み、送料含む)。ラインアップに入れているイチゴは農家支援の一環で、形やサイズが規格外のものを適正な価格で買い取り、ジェラートに使っている。こうした材料の調達コストが反映され、やや高めの価格となっている。

それでも延賀社長は「意味のある消費」を消費者に訴えながら、ストーリー性のある食材を使ったジェラートの開発で、さらなる商品群の拡充を図る。今後はコロナ禍で注目されたお取り寄せ需要を取り込み、早期に「ジェラート商品で年間売上高1億円」(延賀社長)を目指す。(姫路・村上授)

日刊工業新聞2020年7月3日

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