「地方発のロングセラー食品」―長く愛され、食される秘密
さいたま・フルーツゼリー、佐賀・粉末うどんスープ、茨城・干いも。その創意工夫とは?
「ゆるキャラ」に「B1グランプリ」、そして「ふるさと納税特産品」といやま『地方』は大きなブランドだ。ブームのずっと前から、長く売れ続けてきたホンモノの食品がある。一過性に終わらないそれぞれの創意工夫を紹介する。
【トミゼンフーヅ、厳選した果汁や果肉で本来の風味に】
「さいたま生まれ」「彩の国育ち」。トミゼンフーヅのフルーツゼリー「彩果の宝石」にはそんなキャッチフレーズがある。販売を始めたのは20年あまり前。「本当にうまいものをつくろう」と小堤章平社長が長年こだわってきた“果実”でもある。
小堤社長は製菓材料の卸商として事業を始めた時期から、菓子パンの上に飾る装飾ゼリーを手がけていた。「(取引先から)いろいろ頼まれて、それで鍛えられた」(小堤社長)。長年、積み重ねたノウハウが「彩果の宝石」として結実した。
パイン、オレンジ、ラズベリーなど本物の果物のような形で、彩色も鮮やか。表面に使う上質の砂糖がキラリと光る。甘さは控えめで、口の中で適度な歯応えを楽しめる。厳選した果汁や果肉をふんだんに入れてペクチンで固めており、果物本来の風味が生きている。小堤社長は「いい材料を使っている。中途半端なことをしたら続かない。やはり品質」とロングセラーの秘訣(ひけつ)を語る。
現在、果物のゼリーが29種類あるほか、花の形の花ゼリー6種類、葉の形をしたハーブゼリー3種類の計38種類が定番。このほか、国産果実を使ったプレミアムシリーズ7種類や冬季限定の商品を合わせ、全部で62種類を扱う。
【宮島醤油、「うどん」の文字が目を引く昭和風パッケージ】
宮島醤油の「ミヤジマうどんスープ(粉末)」は、味もさることながらパッケージがユーザーに親しまれている商品だ。鮮やかなオレンジ色の斜線に、太い独特の書体で青く大書きされた「うどん」の文字が目を引く。デザインはどことなく“昭和”を感じさせる。
1972年に「ちゃんぽんスープ(粉末)」と同時に発売。5食分で小売価格120円ほどという手頃さと、湯で溶くだけの手軽さが支持されてきた。煮干しベースのさっぱり味で、特に地元・九州で好まれる甘めのしょうゆ味だ。うどんスープは年間約210万個を安定して販売する。
デザインは77年に刷新して以来、ほぼそのまま。本社のある佐賀をはじめ九州北部では「どこのメーカー製か知らなくても、商品のことは知っている人がいる」(経営企画室)ほど。そのため「ユーザーがデザインで商品を覚えており、パッケージを変えられない」(同)という認知の高さだ。
一方、最近は使用する粉末しょうゆを佐賀産原料でつくる自社製「佐賀のしょうゆ」に変えた。地元に根付いた創業132年のしょうゆメーカーとして、大々的ではないが地域性をアピール。同時に、おいしさの追求にこだわり続ける。
【幸田商店、製法にこだわり輝くべっ甲色】
「高級感のある干しいもで人々を感動させたい」。そうした鬼澤宏幸社長の思いから生まれたのが「べっ甲ほしいも=写真」。原料となるサツマイモは「泉」という品種で、天日干しすることでべっ甲色の輝きを放つ。いも本来の強い甘みや風味、もっちりとした食感が特徴。通常のほしいもの価格が150グラムで420円(消費税込み)なのに対し、べっ甲ほしいもは140グラムで570円(同)のプレミアム商品だ。
発売以来長く親しまれている秘訣(ひけつ)は「高品質維持のために妥協しないこと」(鬼澤社長)と言い切る。いもが黒ずんだ色にならないよう、二層になっているいもの内側の皮を、熟練の職人が丁寧にむく。この作業を正確に行える職人は同社に5人ほどしかいないという。
原料となる泉種のうち、実際にほしいもとして使えると判断されるのは全体の半分。見た目や味を基準に職人自らが選別する。このため原料自体の品質が重要であり、幸田商店ではいもの栽培から手がける。高品質のサツマイモを栽培するため、輪作によって畑を良い状態を保つなどの工夫もしている。
2010年度のほしいも品評会「いずみの部」で最優秀賞を、14年の第一回茨城おみやげコンクールでは奨励賞を受賞。「たとえ非効率的でも、今後も品質維持に努めていく」(同)と力を込める。
●トミゼンフーヅ▽所在地=さいたま市南区辻5の3の27▽社長=小堤章平氏▽発売時期=1993年
●宮島醤油▽所在地=佐賀県唐津市船宮町2318▽社長=宮島清一氏▽発売時期=1972年
●幸田商店▽所在地=茨城県ひたちなか市平磯町1113▽社長=鬼澤宏幸氏▽発売時期=2004年
※毎週金曜日に日刊工業新聞で連載している「キラリわが社のロングセラー」の中からセレクト。
【トミゼンフーヅ、厳選した果汁や果肉で本来の風味に】
「さいたま生まれ」「彩の国育ち」。トミゼンフーヅのフルーツゼリー「彩果の宝石」にはそんなキャッチフレーズがある。販売を始めたのは20年あまり前。「本当にうまいものをつくろう」と小堤章平社長が長年こだわってきた“果実”でもある。
小堤社長は製菓材料の卸商として事業を始めた時期から、菓子パンの上に飾る装飾ゼリーを手がけていた。「(取引先から)いろいろ頼まれて、それで鍛えられた」(小堤社長)。長年、積み重ねたノウハウが「彩果の宝石」として結実した。
パイン、オレンジ、ラズベリーなど本物の果物のような形で、彩色も鮮やか。表面に使う上質の砂糖がキラリと光る。甘さは控えめで、口の中で適度な歯応えを楽しめる。厳選した果汁や果肉をふんだんに入れてペクチンで固めており、果物本来の風味が生きている。小堤社長は「いい材料を使っている。中途半端なことをしたら続かない。やはり品質」とロングセラーの秘訣(ひけつ)を語る。
現在、果物のゼリーが29種類あるほか、花の形の花ゼリー6種類、葉の形をしたハーブゼリー3種類の計38種類が定番。このほか、国産果実を使ったプレミアムシリーズ7種類や冬季限定の商品を合わせ、全部で62種類を扱う。
【宮島醤油、「うどん」の文字が目を引く昭和風パッケージ】
宮島醤油の「ミヤジマうどんスープ(粉末)」は、味もさることながらパッケージがユーザーに親しまれている商品だ。鮮やかなオレンジ色の斜線に、太い独特の書体で青く大書きされた「うどん」の文字が目を引く。デザインはどことなく“昭和”を感じさせる。
1972年に「ちゃんぽんスープ(粉末)」と同時に発売。5食分で小売価格120円ほどという手頃さと、湯で溶くだけの手軽さが支持されてきた。煮干しベースのさっぱり味で、特に地元・九州で好まれる甘めのしょうゆ味だ。うどんスープは年間約210万個を安定して販売する。
デザインは77年に刷新して以来、ほぼそのまま。本社のある佐賀をはじめ九州北部では「どこのメーカー製か知らなくても、商品のことは知っている人がいる」(経営企画室)ほど。そのため「ユーザーがデザインで商品を覚えており、パッケージを変えられない」(同)という認知の高さだ。
一方、最近は使用する粉末しょうゆを佐賀産原料でつくる自社製「佐賀のしょうゆ」に変えた。地元に根付いた創業132年のしょうゆメーカーとして、大々的ではないが地域性をアピール。同時に、おいしさの追求にこだわり続ける。
【幸田商店、製法にこだわり輝くべっ甲色】
「高級感のある干しいもで人々を感動させたい」。そうした鬼澤宏幸社長の思いから生まれたのが「べっ甲ほしいも=写真」。原料となるサツマイモは「泉」という品種で、天日干しすることでべっ甲色の輝きを放つ。いも本来の強い甘みや風味、もっちりとした食感が特徴。通常のほしいもの価格が150グラムで420円(消費税込み)なのに対し、べっ甲ほしいもは140グラムで570円(同)のプレミアム商品だ。
発売以来長く親しまれている秘訣(ひけつ)は「高品質維持のために妥協しないこと」(鬼澤社長)と言い切る。いもが黒ずんだ色にならないよう、二層になっているいもの内側の皮を、熟練の職人が丁寧にむく。この作業を正確に行える職人は同社に5人ほどしかいないという。
原料となる泉種のうち、実際にほしいもとして使えると判断されるのは全体の半分。見た目や味を基準に職人自らが選別する。このため原料自体の品質が重要であり、幸田商店ではいもの栽培から手がける。高品質のサツマイモを栽培するため、輪作によって畑を良い状態を保つなどの工夫もしている。
2010年度のほしいも品評会「いずみの部」で最優秀賞を、14年の第一回茨城おみやげコンクールでは奨励賞を受賞。「たとえ非効率的でも、今後も品質維持に努めていく」(同)と力を込める。
●トミゼンフーヅ▽所在地=さいたま市南区辻5の3の27▽社長=小堤章平氏▽発売時期=1993年
●宮島醤油▽所在地=佐賀県唐津市船宮町2318▽社長=宮島清一氏▽発売時期=1972年
●幸田商店▽所在地=茨城県ひたちなか市平磯町1113▽社長=鬼澤宏幸氏▽発売時期=2004年
※毎週金曜日に日刊工業新聞で連載している「キラリわが社のロングセラー」の中からセレクト。
日刊工業新聞2014年12月19日、2015年01月16日/同03月13日 列島ネット面