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約20年前に開設した商取引支援サイト。コロナ禍で大活躍のワケ

約20年前に開設した商取引支援サイト。コロナ禍で大活躍のワケ

商工会議所・商工会が運営するビジネス情報サイト「ザ・ビジネスモール」サイト画面

大阪商工会議所が事務局を務める商取引支援サイト「ザ・ビジネスモール」が、新型コロナウイルス感染症で滞った商流の問題解決に役立っている。過剰在庫処分の“売りたい”や、仕入れ困難になった部品の“買いたい”など企業ニーズはさまざま。4―6月の新規ユーザー登録は通常の2倍ペースで増加。単発の取引だけでなく、継続取引につながった事例も出始めた。(取材=大阪・坂田弓子)

ザ・ビジネスモールは約20年前に大商が中小企業の販路拡大のために開設したサイト。後に近畿の商工会議所、全国の商工会議所や商工会へと段階的に連携拡大し、現在456団体が参画して会員企業間の取引をつないでいる。同サイト内で3月に、新型コロナに関連する緊急販路開拓支援サイト「BM SOSモール」を開設し、緊急の“売りたい”と“買いたい”の情報掲示を始めた。

イベントのキャンセルや外出自粛で影響を受けた飲食店向けの食べ物の在庫は全国的にだぶついている。大商は「野菜や生ものなどは対応できないが、ドレッシングや菓子、紅茶などある程度賞味期限がある食べ物の在庫処分に役立っている」(松井伊代子経営情報センター所長)と見る。

“買いたい”では、サプライチェーンの混乱で手に入らなくなった時計の特殊部品の情報が掲示されるなど、業種の多様性も商工会議所ならでは。また、緊急時の新規取引で企業の壁となるのが信頼性だが「サイトの情報はどこの会議所に所属しているかも明示されており“身元が割れている”」(同)。このため信用調査などで一定の簡略化や軽減も可能となる。

同サイトは情報発信の場を提供するもので取引に会議所は関与しない。そのため成約数は把握できていないものの、5月11日時点で“売りたい”を掲示していた82社を対象にアンケートしたところ、28件から回答があり、問い合わせが34件、成約11件があったことがわかった。

東京商工会議所所属のスキンケア商品会社は「売り上げが立ち、継続取引にも道が開けた」ほか、北九州商工会議所所属の菓子製造業は地元産品を使った菓子で3件の商談が成立したという。

大商は4月23日から同サイトで「医療・介護資材SOSマッチング」も開始。防護服など“買いたい”情報が21件寄せられ、5月21日からは「新型コロナ対策商品・サービス」も加わり、テレワークシステムなど掲示情報の幅が急速に膨らんでいる。

ただ、今後は不況下の売り手過多でいかに取引を拡大するかも課題となる。松井所長は「急場しのぎで作ったサイトを順次改良して見せ方を工夫していく」とし、拡大し始めたオンライン取引の芽を一気に伸ばそうとしている。

新型コロナをきっかけに、中小企業の商流が変わる可能性が出てきた。

日刊工業新聞2020年7月2日

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