賛否噴出!「大阪万博」誘致とカジノ整備は結びつくのか
会場建設・運営で2000億円、集客力と費用捻出で魅力はあるが・・
2025年「大阪万博」の実現に向けた活動が本格化する。政府は国際博覧会(万博)を大阪に誘致するため、大阪府が取りまとめた基本構想を検証するなどし、17年5月までの立候補を目指す。関西経済は地盤沈下が進むだけに、万博開催は復権への大きなチャンス。そこに浮上してきたのがカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備とからませる案だ。
万博会場になる大阪湾岸・夢洲(大阪市此花区)で、IR整備が実現すれば、訪日外国人消費に沸く関西の集客力をさらに高められる。停滞していた大阪ベイエリア開発にも弾みが付くだろう。まさに一挙両得以上の効果が得られるわけだ。
ただ万博開催には交通手段などのインフラ整備は欠かせず、多額の費用が必要。万博と関連したカジノ誘致への意見も割れ、地元の足並みはそろい切れていない。万博を誘致し、開催を成功させるためには、関西、さらには日本全体が一体となって取り組む必要がある。
万博誘致で最大のハードルとなるのが費用負担の問題だ。大阪府は事業費が会場建設費と運営費だけで2000億円を超えると試算。しかし誰がどれだけ負担するのか、現時点では棚上げになっている。
大阪府の松井一郎知事は7日の会見で「関西産業界とはこれまでさまざまな形で話し合っており“ここまできたらパリに勝ち抜こう”という発言も頂いている。
関西の行政の首長とも関西広域連合において万博誘致を決議していただき賛同を頂いている。心配には及ばない」と自信をみせる。しかし府・市とも財政事情は厳しい。
過去の万博の例で言えば経済界も3分の1の負担が求められる。関西経済連合会の森詳介会長は「関西だけでは難しい。経団連を中心にオールジャパンで支える態勢を考える必要がある」と訴える。現状では奉加帳形式以外に方策は出ておらず、費用負担が大きくのしかかる。
統合型リゾート(IR)法案が成立した今、IRと万博をセットとし、IR事業者に負担を求める案もある。だが、万博と絡むIRについて、大阪商工会議所の西村貞一副会頭(サクラクレパス会長)は「海外の成功例と失敗例をもっと見極めるべきだ」など慎重論も多い。
関西には10年に7府県(現在は8府県)が設立し、関西全体の広域行政を担う「関西広域連合」がある。通常、その委員会には首長が出席するが、松井大阪府知事は、ほぼ欠席状態にある。
その関西広域連合や関西産業界などで進める21年のスポーツイベント「関西ワールドマスターズゲームズ(WMG)」。大阪府・市は当初、「費用対効果が見込めない」と参加に難色を示した。その後、橋下徹前市長から吉村洋文市長に代わってから市は参加を表明し費用負担にも応じた。しかし府は今も費用負担に応じていない。
それが16年9月末、安倍晋三首相が「万博は地域経済活性化の起爆剤となる」と発言すると、直後の関西広域連合の委員会に松井知事は出席。誘致の協力を取り付けた。
経済界も府が万博誘致を打ち上げた14年5月の段階では費用負担とWMGへの対応から冷ややかだったが、安倍首相の発言以降、誘致に前向きにならざるを得なくなった。
森関経連会長は、10月末に府が発表した基本構想案に「要望していた項目が盛り込まれた」と評価。以前からIRを推進する関西経済同友会の蔭山秀一代表幹事は「IRと一緒に考えれば資金面で万博も開催しやすくなる」とIRとの一体誘致を歓迎した。
一方で大阪商工会議所の尾崎裕会頭は「万博を主体的に取り組む経済団体があるのはうれしい」としつつ、両者と距離を置く。
会議所の会員の多くを中小企業が占め、誘致を会員のメリットに結びつけにくいためだ。ギャンブル依存症を懸念する声もあり、産業界でも温度差がある。
(大阪湾から左手前の人工島「夢洲」を望む=大阪市港湾局提供)
万博会場になる大阪湾岸・夢洲(大阪市此花区)で、IR整備が実現すれば、訪日外国人消費に沸く関西の集客力をさらに高められる。停滞していた大阪ベイエリア開発にも弾みが付くだろう。まさに一挙両得以上の効果が得られるわけだ。
ただ万博開催には交通手段などのインフラ整備は欠かせず、多額の費用が必要。万博と関連したカジノ誘致への意見も割れ、地元の足並みはそろい切れていない。万博を誘致し、開催を成功させるためには、関西、さらには日本全体が一体となって取り組む必要がある。
万博誘致で最大のハードルとなるのが費用負担の問題だ。大阪府は事業費が会場建設費と運営費だけで2000億円を超えると試算。しかし誰がどれだけ負担するのか、現時点では棚上げになっている。
大阪府の松井一郎知事は7日の会見で「関西産業界とはこれまでさまざまな形で話し合っており“ここまできたらパリに勝ち抜こう”という発言も頂いている。
関西の行政の首長とも関西広域連合において万博誘致を決議していただき賛同を頂いている。心配には及ばない」と自信をみせる。しかし府・市とも財政事情は厳しい。
過去の万博の例で言えば経済界も3分の1の負担が求められる。関西経済連合会の森詳介会長は「関西だけでは難しい。経団連を中心にオールジャパンで支える態勢を考える必要がある」と訴える。現状では奉加帳形式以外に方策は出ておらず、費用負担が大きくのしかかる。
統合型リゾート(IR)法案が成立した今、IRと万博をセットとし、IR事業者に負担を求める案もある。だが、万博と絡むIRについて、大阪商工会議所の西村貞一副会頭(サクラクレパス会長)は「海外の成功例と失敗例をもっと見極めるべきだ」など慎重論も多い。
ギャンブル依存症を懸念する声も
関西には10年に7府県(現在は8府県)が設立し、関西全体の広域行政を担う「関西広域連合」がある。通常、その委員会には首長が出席するが、松井大阪府知事は、ほぼ欠席状態にある。
その関西広域連合や関西産業界などで進める21年のスポーツイベント「関西ワールドマスターズゲームズ(WMG)」。大阪府・市は当初、「費用対効果が見込めない」と参加に難色を示した。その後、橋下徹前市長から吉村洋文市長に代わってから市は参加を表明し費用負担にも応じた。しかし府は今も費用負担に応じていない。
それが16年9月末、安倍晋三首相が「万博は地域経済活性化の起爆剤となる」と発言すると、直後の関西広域連合の委員会に松井知事は出席。誘致の協力を取り付けた。
経済界も府が万博誘致を打ち上げた14年5月の段階では費用負担とWMGへの対応から冷ややかだったが、安倍首相の発言以降、誘致に前向きにならざるを得なくなった。
森関経連会長は、10月末に府が発表した基本構想案に「要望していた項目が盛り込まれた」と評価。以前からIRを推進する関西経済同友会の蔭山秀一代表幹事は「IRと一緒に考えれば資金面で万博も開催しやすくなる」とIRとの一体誘致を歓迎した。
一方で大阪商工会議所の尾崎裕会頭は「万博を主体的に取り組む経済団体があるのはうれしい」としつつ、両者と距離を置く。
会議所の会員の多くを中小企業が占め、誘致を会員のメリットに結びつけにくいためだ。ギャンブル依存症を懸念する声もあり、産業界でも温度差がある。
(大阪湾から左手前の人工島「夢洲」を望む=大阪市港湾局提供)
日刊工業新聞2016年12月20日「深層断面」から抜粋