日本通運が箱型器材で積載効率向上、荷崩れや汚破損を防ぐ
人手不足顕在化
物流現場では労働力不足の問題が顕在化している。荷主、物流事業者の双方にとって、生産性改善は喫緊の課題。その改善策の一つが、貨物をバラ積みではなく、パレットやコンテナのような標準化された単位で輸送・保管するユニットロード化だ。日本通運は輸送中の荷崩れや汚破損を防ぐ箱型の輸送器材「NEX―NET プロテクトBOX」を開発し、国内の輸送ネットワークに乗せる新たな輸送サービスの提供を始めた。
新型コロナウイルス感染症の影響で経済が停滞する中、トラック運転手不足は足元で緩和された状況だが一時的な現象に過ぎない。佐久間啓文ネットワーク商品企画部長は、慢性的な人手不足への抜本的な対策について「物流全体の時間短縮に取り組まなければならない」と強調する。
荷主側の倉庫や配送センターでも人手不足は深刻であり、荷崩れを防ぐために行う輸送前の梱包(こんぽう)、配送先における開梱の効率化は欠かせない。プロテクトBOXは梱包を簡素化できる堅牢(けんろう)性を特徴に、使い勝手のよいサイズで貨物単位の標準化を狙った商品だ。
作業時間半減
例えば使用済みのレーザープリンターを回収・発送する際、従来はパレットに積みつけて荷崩れ防止用フィルムを巻いていた。プロテクトBOXを使うとボックスを組み立てて荷物と緩衝材を詰めれば発送可能。作業時間は従来の20分から10分に半減できるという。
新型コロナ感染防止対策として、物流では納品、荷下ろしにかかる時間の短縮が求められている。「ボックスで届けられれば、接触機会を減らせる」(佐久間部長)として“ウィズコロナ”にも適応した運び方として、訴求していく考えだ。
環境配慮型
プロテクトBOXは岐阜プラスチック工業(岐阜市)との共同開発品。ハニカム構造を持つ強固で軽量な樹脂の側壁・天井とパレットを組み合わせた。空ボックスはたたんで回収利用が可能。梱包フィルムが削減できることもあり、環境配慮型の物流を実現する。
1・1メートル角の標準パレットサイズで高さ1メートル、1立方メートル弱の容積を活用でき、コンテナ同様に施錠も可能だ。トラックや鉄道コンテナで輸送する際には、これまで平積みしていたパレット輸送貨物も2段積みが可能で、高さの部分に生じる空きスペースを活用し、積載効率が高められる。
4月から企業間輸送サービス「アロー便」と組み合わせて、東京・横浜・名古屋・大阪間の輸送商品として運用を開始した。1000基分用意して早期の普及を目指していく。
ボックス単位にすることでトラック輸送だけでなく「内航船や鉄道を組み合わせた輸送も提供したい」(佐久間部長)と展開を見据える。輸送中の自然災害で代替輸送への積み替えが必要になった場合にも、迅速な対応が可能だ。さらに低温対応や全地球測位システム(GPS)をはじめとするセンサーの搭載によるIoT(モノのインターネット)化など、プロテクトBOXは進化していく可能性を秘めている。(小林広幸)