【グラフ解説】縮むサービス産業、危機的業界はどこ?
低下幅 今基準内最大に
本年4月のサービス産業(第3次産業)活動指数は、指数値91.6、前月比マイナス6.0%と3か月連続の低下となった。
サービス産業活動は昨年10月に大幅に低下した後、11月以降、3か月連続で活動水準を戻してきたが、2月以降低下が続き、2月は前月比マイナス0.7%、3月は同マイナス3.8%、そして4月は同マイナス6.0%と、低下幅は拡大の速度を増している。この背景には、2月以降、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大してきていることがある。
特に4月は、この感染症の感染拡大防止のため、外出自粛などの要請が出されていたところから、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出され、またその対象地域も全国に拡大されることにより、休業や営業時間短縮などの要請も広がり、また人と人との接触機会削減も強力に呼びかけられ、様々な経済活動が全国的に抑制されていた。その影響がサービス産業活動の低下にも顕著に表れている。4月の低下幅は、2015年を100とする今基準内(2013年1月~)で最大となり、指数値91.6は、今基準内でも群を抜いて低い最低の水準を更新した。3月に続いて、4月も指数値は急落が続く形となった。
卸売業や不動産業にも
4月の業種別の動きをみると、8業種が前月比低下、3業種が前月比上昇という結果となった。「医療, 福祉」、情報通信業、電気・ガス・熱供給・水道業といった上昇業種もあったものの、低下寄与業種の低下幅が大きかったことで、サービス産業活動全体では前月比で最大の低下幅となった。
特に低下寄与が大きかった業種は、生活娯楽関連サービス、「運輸業,郵便業」、小売業、卸売業、不動産業が挙げられる。このうち上位3業種は、3月も低下寄与の上位3業種となっていたのに続き、4月も大幅な低下となり、新型コロナウイルス感染症が特にこの上位3業種に大きく影響したことが、第3次産業活動全体の大幅低下をもたらしたことがわかる。加えて4月は、卸売業、不動産業などにも影響が拡大した形となっている。
生活娯楽関連サービスに関しては、4月は前月比マイナス31.7%と、3か月連続の低下となり、低下幅も今基準内の最大幅を更新した。指数値も今基準内の最低水準を再び大幅に更新し49.6となり、前年同月比でもマイナス50.8%と、平時の約半分まで縮小した。4月は特に、飲食店、娯楽業、洗濯・理容・美容・浴場業が低下している。緊急事態宣言の発出と全国への対象地域拡大により、外出自粛要請や、営業時間短縮・休業の要請も全国的に行われ、これら業種の利用・売上が顕著に減少したことが影響したと考えられる。
「運輸業,郵便業」は、前月比マイナス12.7%と、3か月連続の低下となり、指数値、低下幅とも、今基準内でも群を抜いて低い最低値を更新した。特に一般貨物運送業や鉄道旅客運送業、運輸施設提供業が大きく低下した。3月に引き続き、外出・移動の自粛要請、出入国の制限などの影響で旅客運送がさらに減少したことに加え、4月は鉱工業生産・出荷や卸売業も大きく低下するなど、新型コロナウイルス感染症の影響でモノの取引が停滞し、貨物運送にもその影響が大きく出たことが、「運輸業,郵便業」の連続大幅低下の要因として考えられる。
小売業は、前月比マイナス9.3%と、2か月連続の低下となった。内訳業種では医薬品・化粧品小売業を除くすべての小売業が軒並み低下しており、特に織物・衣服・身の回り品小売業や自動車小売業、各種商品小売業が大きく低下した。新型コロナウイルス感染症の影響で、外出自粛や休業・営業時間短縮などが全国的に行われていた影響が大きいものと考えられる。
「対事業所」向けにも影響広がる
サービス産業活動指数は、大きく「広義対個人サービス」と「広義対事業所サービス」に分けることができる。
4月の対個人サービス活動指数は、指数値87.1、前月比マイナス7.2%と3か月連続の低下だった。対事業所サービス活動指数は、指数値95.8、前月比マイナス5.0%と3か月連続の低下だった。3月も対個人サービス、対事業所サービスともに低下したが、3月は対個人サービスの低下寄与が大きかったのに対し、4月は対事業所サービスの低下寄与も大幅に拡大しており、4月は新型コロナウイルス感染症の影響が、対個人サービスのみならず対事業所サービスにまで大きく広がったことが感じられる。
「製造業依存型」「非製造業依存型」ともに
対事業所サービスは、製造業の取引先が多いか、そうでないかによって、製造業依存型と非製造業依存型に分けることができ、それぞれの指数も計算している。
4月は、製造業依存型事業所向けサービスは前月比マイナス7.9%と2か月連続の低下だったが、非製造業依存型事業所向けサービスは前月比マイナス3.6%と、3か月連続の低下となった。
製造業依存型事業所向けサービスに関しては、鉱工業生産・出荷も4月はマイナス10%近く低下していたことから、その影響もあり大幅低下したものと考えられる。他方、非製造業依存型事業所向けサービスも、3か月連続の低下となった。
不要不急の消費抑制響く
対個人サービスは、生活必需的な性質で変動が相対的に少ないと考えられる非選択的サービスと、選択性が高く所得環境や経済情勢などの影響を受けやすいと考えられるし好的サービスに分けられ、それぞれの指数も計算している。
それぞれの動向についてみてみると、4月は非選択的個人向けサービスは前月比2.5%と2か月ぶりの上昇だった。一方、し好的個人向けサービスは前月比マイナス19.8%と3か月連続の低下だった。4月は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための緊急事態宣言発出もあり、不要不急の消費が抑えられた影響が、し好的個人向けサービスの大幅低下にも如実に出た形となった。
基調判断「急落している」を据え置き
本年4月のサービス産業活動指数は、前月比マイナス6.0%と、3か月連続の前月比低下となった。サービス産業活動は、特に3月以降、活動水準の急落が続いている。
この背景には、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大していることがある。特に4月は、感染症の拡大防止のための緊急事態宣言の発出や全国への対象拡大が行われたことで経済活動が幅広く抑制され、サービス産業活動も、し好的個人向けサービスのみならず対事業所サービスも大幅低下したことにより、4月も指数の急落が続くこととなった。
こうした状況を踏まえ、サービス産業(第3次産業)活動指数の4月の基調判断としては、「急落している」を据え置きたいと考える。なお、5月に関しては、感染症をめぐり緊急事態宣言は延長されたものの、その後解除の動きも進められており、このことがサービス産業活動にどのような影響をもたらすのか、先行きも引き続き注視していきたい。
【関連情報】結果概要のページ
参考図表集
『就職にも使える! 第3次産業活動指数』(マンガ)