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急成長した「整骨院」倒産の衝撃、コロナ以前から頻発していた“不適切な行為”

MJG接骨院、不信のきっかけは景品表示法での行政指導
急成長した「整骨院」倒産の衝撃、コロナ以前から頻発していた“不適切な行為”

社員が「部位数水増し」による不適切な請求などを告発(写真はイメージ)

4月10日に接骨院チェーン「MJG接骨院」を約178店舗展開していたMJGが約44億円の負債を抱えて東京地裁へ自己破産を申請した。接骨・整骨業界で“勝ち組”とされていた急成長企業の倒産に業界内でも衝撃が走った。

同社は2012年3月に設立。独自の矯正プログラム『PIMバランス』を主力に多摩地域で店舗数を増やし、15年11月期の年売上高は約2億8900万円を計上した。その後は関東エリアへの出店やフランチャイズ化で事業を拡大し、急成長中の整骨・接骨チェーンとして注目されていた。

19年には人気アイドルグループに所属していた女性タレントをイメージキャラクターに起用。178店舗まで拡大したが、同年11月に埼玉県が「『やせプログラム』で体脂肪が減る」「患者や医師の評価が全国1位」とされる同社のウェブサイトの宣伝文句に合理的根拠がないとして、景品表示法に基づき再発防止策を命じた。この件がメディアで報じられ、売り上げが低迷するようになった。

ここ数年の出店攻勢が奏功し、19年11月期の年売上高は約50億3300万円に拡大する一方で、出店や広告宣伝費がかさみ、借入金は約21億4100万円まで膨らんでいた。手元のキャッシュを示すフリーキャッシュフローは19年11月期時点で4期連続のマイナスとなり、資金繰りに窮するようになっていた。

こうしたなか、今年2月下旬に社員が記者会見で「受け付け社員の雇い止め」の労使問題、傘下の接骨院での「部位数水増し」による不適切な請求や高額な「施術回数券」の販売促進の強要などを告発。取引先や金融機関の間でも信用不安が広がっていった。

追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令されたことで、翌8日からほぼ全ての店舗を休院。先行きの見通しが立たなくなり、同月10日に東京地裁へ自己破産を申請した。

(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年6月9日

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