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米国や英国の2分の1以下!日本のアマゾンプライムが格段に安いわけ

今日はなんの日

2007年6月8日、アマゾンドットコムは日本で会員制サービス「アマゾンプライム」を始めた。開始当初は通常配送費の無料や翌日配送など配送特典のサービスだったが、今では、会費のみで映画や音楽が楽しめたり、写真を保存できたり、会員限定セールなどの特典が用意されている。19年4月にサービス開始以来初めて、年会費を3900円から4900円に値上げしたが、米国や英国は段階的に値上げしており、年会費は今や日本円にして1万円を超えている。果たして日本の会費が格段に安いわけとは。

アマゾンは20年1月にアマゾンプライムの世界での会員数は1億5000万人を突破したと発表した。国別の会員数は公表していないが、市場調査会社CIRPのレポートによると、米国では18年10~12月時点で会員数はすでに1億100万人に達したと推計している。

この推計がどこまで正確かはわからないが、アマゾンの地域別の売り上げ比率から考えても、大きな乖離はないだろう。

アマゾンの19年の総売上高に対する地域別の比率は米国が69%、ドイツ7・9%、英国6・2%、日本5・7%と続く。この4カ国で約90%を占める。

米国の会員数は世界全体の1億5000万人の69%とすると単純計算で1億350万人になる。母国市場だけに上振れしている可能性が高いとすると、1億1000万前後といったところだろうか。日本は5・7%のため、売上高比率に基づくと850万人となる。アメリカが上振れしているとすると、500万ー850万人とみておけば大きく外れることはないだろう。

主要4ヶ国では突出して日本での年会費が安い。米国119ドル(約1万3000円)、英国が79ポンド(約1万1000円)と日本の2倍以上だ。米英に比べて安いドイツですら69ユーロ(約8400円)と日本に比べて7割以上高い。日本市場は他国が値上げする中、3900円で19年まで据え置いてきたことを考えると異質さが浮かび上がる。

そうした中での一年前の1000円の値上げの影響についてアマゾンから公式アナウンスはないが、ほとんど影響がないと識者の見方は一致している。送料無料や当日配送、指定された電子書籍の読み放題、プライム・ビデオ見放題などを享受している利用者にしてみれば、もはや、これらのサービスは「なくてはならないもの」となっている。サービスが必要不可欠なものになれば、顧客を失うことなく強気の値上げも可能だ。日本以外の主要市場では段階的に値上げしても会員数が右肩上がりであることがそれを物語っている。

日本が他の主要市場と比べて年会費が安いのは、「なくてはならない」と感じるユーザーを増やせる、土壌をまだまだ耕せるとアマゾンが睨んでいるからだろう。

日本の総人口が約1億2600万人に対し英国は6700万人、ドイツ8300万人。日本の人口は両国より5ー8割多いにも関わらず、英国やドイツの方が日本より売り上げが多い。つまり、人口などから考えて、伸びしろが多いと判断しているからこそ、「囲い込み」のために会費を抑えていると推測できる。人口と地域別売り上げから判断して、伸びしろが少ないであろう英国の年会費がドイツや日本よりもはるかに高いことからもそれは明らかではないだろうか。

逆に言えば、日本が低価格でサービスを享受できるのは、いまのうちかもしれない。「なくてはならない」と感じるユーザーが増えれば、米国や英国とまではいかないまでも、ドイツのような値上げは避けられないはずだ。

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