コロナ禍で大崩れなし。日立「改革の成果実感」
日立製作所が、この10年間の構造改革の成果を試されている。2008年のリーマン・ショックにより巨額赤字に転落し、その後に大規模な事業再編を断行した。直近では上場子会社だった日立化成を昭和電工に売却。社会イノベーション事業中心のグループ体制に移行しつつある。新型コロナウイルス感染拡大の逆風でも大崩れしない“体幹の強さ”が求められる。
日立製作所の東原敏昭社長は29日のオンライン会見で「この10年かけて改革を進めて、リーマン・ショックより経済的影響が大きいといわれるコロナの状況下でも当期利益を確保する段階まで来た。改革が成果を出しつつあると実感している」と胸を張った。
日立の21年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、当期利益が前期比3・8倍の3350億円となる見通しだ。一時的な事業売却益なども織り込むが、営業利益も同43・8%減の3720億円に踏みとどまる。新型コロナウイルス感染症の影響により3010億円の営業減益要因が足を引っ張る中でも黒字を堅持する。
稼ぎ頭のIT事業部門の営業利益予想は新型コロナ影響が490億円押し下げるものの、1920億円と売上収益営業利益率10・0%と2ケタを守る。注力するIoT(モノのインターネット)共通基盤「ルマーダ」事業について、売上高にあたる売上収益予想は同11・9%増の1兆1600億円と順調に伸ばす計画。
一方で、新型コロナの逆境下で設備投資・投融資の優先順位を見直す。東原社長は「営業キャッシュフローが落ちてくるので、その確保の仕方を見極めながら投資検討をしていく」と減額を示唆した。21年3月期の設備投資額は先行き不透明なため開示しなかった。
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日刊工業新聞2020年6月1日