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出そろった第2次補正予算案の経済政策、どんなものがあるの?

2020年度第2次補正予算案の経済政策が出そろった。中小企業などへの資金繰り対策を拡充するほか、官民ファンドを通じて財務基盤の強化にも乗り出す。経済活動が再開しても「ニューノーマル(新常態)」の世界では思うように消費が拡大せず、資金難が長期化する恐れがある。政府は融資から出資まで幅広い金融支援メニューを用意し、連鎖的な経営破綻を防ぐ狙いだ。(編集委員・敷田寛明、石井栞、高田圭介)

中小の再建急務 事業規模750億円 官民2ファンド

中小企業への資金繰り支援や財務強化は喫緊の課題となっている。2020年版中小企業白書によると、資本金1000万円未満の企業はキャッシュが逼迫(ひっぱく)しており、現金などの手元資産で給与など固定費を支払う能力は0・97年分にとどまるという。収入減の状況が続けば、来春には倒産が相次ぐ事態になりかねない。このため足元の資金支援と同時に、財務健全性の毀損(きそん)を防止し持続的に経営できる措置が求められている。

政府はこうした状況を踏まえ、資本面から下支えする政策を数多く盛り込んだ。中小向けには中小企業基盤整備機構を通じ、事業規模750億円の二つの官民ファンドを組成する。「中小企業経営力強化支援ファンド」は出資を通じて事業の再生と成長を支援しつつ、第三者承継や地域産業の事業再編を促し活性化を図る。また「中小企業再生ファンド」は過大な債務を抱えた中小に対し、債権の買い取りや経営改善を実行する方針だ。

一方、中小向け劣後ローンの支援メニューも用意した。キャッシュフローが不足するスタートアップ企業や一時的に財務が悪化した中小企業に対し、日本政策金融公庫(日本公庫)などが資本性の高い劣後ローンを供給。民間金融機関からの追加融資も呼び込みつつ、安定的な経営再建を後押しする。

他方、中堅・大企業でも運輸・観光業などを中心に財務状況が悪化しつつある。そこで中堅・大企業に対しても日本公庫を通じた劣後ローンの供給や、日本政策投資銀行による投融資枠の拡充などを行う。また、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は投融資枠を2倍以上拡充し、2兆8000億円を確保。産業再編を視野に入れた投資を行い、国際競争力の強化につなげる。

資金繰り支援 無担保融資上限アップ/家賃助成

資金繰りについては、全国1050カ所に設置した相談窓口で直近で約140万件の相談が寄せられ、毎日3万件のペースで増えている。相談のほとんどが資金繰り支援だ。日本公庫はすでに中小企業向けに融資を実施しており、半数以上が1億円以上の融資だった。

こうした状況を踏まえ、資金繰り支援で実質無利子・無担保融資の上限額を引き上げるなど拡充する。

日本公庫や商工中金などの中小企業に対する融資限度額を従来の3億円から6億円に引き上げる。利下げの上限額も中小では従来の1億円から2億円とする。要件を満たせば、当初3年間は、利子補給により実質無利子となる。

政府系金融機関に申し込みが殺到するのを受け、1日には都道府県の制度融資を活用した民間金融機関による実質無利子・無担保融資もスタート。利子補給の融資上限額を従来の3000万円から4000万円に引き上げた。信用保証料の減免措置も取っており、この上限も同じく4000万円とした。

売り上げが半減した法人に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に同100万円を給付する「持続化給付金」も予算を積み増す。今回の予算は1兆9400億円で、約100万社を追加支援する。1次補正と合わせて合計で約250万社の支援となる。今回、1―3月に創業した企業にも対象を広げた。

事業収入を前提とした制度のため、同給付金の対象外だった雑所得や給与所得で申告するフリーランスも対象となる。持続化給付金の枠組み内で、申請の受け付けは6月中旬になる見通しだ。

5月の緊急事態宣言の延長などで固定費の支払いに苦慮する事業者を支援するため「家賃支援給付金」を創設する。法人は月額50万円を上限に、6カ月分の家賃の3分の2を給付する。個人事業者の月額上限は25万円。複数店舗を所有する場合などは、給付上限額の超過額の3分の1を給付する。

対象は、5―12月の売上高が前年同月比で50%以上減少、もしくは連続する3カ月の売上高が同30%以上減少する事業者となっている。予算は約2兆242億円。

海外サポート 保険引受枠1兆5000億円

新型コロナウイルスの世界的な収束時期はいまだに見通せず、海外で展開する日系企業の事業活動にも影を落としている。運転資金が途切れないように流動性確保が求められる一方、資金供給に対して慎重な動きも懸念される。

現地での経済活動の停滞が長期化し、日系企業の資金繰り悪化も危惧される中で政府は政府保証枠の拡充で日本貿易保険(NEXI)による保険引受枠を1兆5000億円に設定。民間金融機関が海外日系子会社に対して融資する際にNEXIが引受先となる融資保険を結び、資金供給の促進とともに融資リスクの低減を図る。

新たな労働環境整備 コロナ防止策、最大50万円

感染防止を意識した新たな労働環境の整備が急務となっている(イメージ)

緊急事態宣言解除による本格的な経済活動再開に伴い、感染防止を意識した新たな労働環境の整備が急務となっている。事業再開を支援するため、持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金の補助率引き上げや「事業再開枠」の新設で拡充を図る。

事業再開枠はものづくり補助金と持続化補助金を対象に、消毒やマスク、飛沫(ひまつ)防止対策の備品購入や換気設備の設置など感染防止対策の経費を対象に、従来の上限から定額で最大50万円を引き上げる。ナイトクラブやライブハウスなどクラスター(感染者集団)対策が必要な業種はさらに50万円を上乗せする。

補助率は新型コロナ感染拡大に伴って設けた「特別枠」を対象に、3補助金共通で3分の2から4分の3へ引き上げる。補助経費の6分の1以上がキャッシュレス決済端末の導入や電子商取引(EC)へのシフト、ウェブ会議システムなどの導入に充てることを条件に、企業による非対面型ビジネスの展開やテレワークの整備を促す。

日刊工業新聞2020年5月28日

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