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航空機産業で始まった米中の"接近"

日本企業には警戒感も
航空機産業で始まった米中の"接近"

習主席の訪米に合わせて大型受注を発表したボーイング(同社の公式ツイッターから)

 米ボーイングは9月下旬、小型機「737」シリーズの仕上げ工程と機体納入に使う施設を、中国に置くと発表した。米国以外では初となる自前の生産拠点であり、中国の航空会社向けの納入拠点として運用していく考えだ。ライバルの欧エアバスが中国に小型機「A320」シリーズの最終組み立てラインを持っていることと比べれば、ボーイングの一部移転は"小さな一歩"に過ぎないようにも見える。それでも、ボーイングとの関係を重視してきた日本の航空機産業では、中国への警戒感が高まっている。

"爆買い"だけではなかった


 9月下旬、オバマ米大統領との会談に臨むために訪米した中国の習近平国家主席が最初に向かったのは、首都ワシントンD.C.ではなく、西海岸にある「もう一つのワシントン」だった。ワシントン州シアトル。航空宇宙世界最大手のボーイングが主力拠点を構える航空機産業の集積地である。23日、当地を訪れた習主席は、ボーイングの航空機を計300機購入する契約を交わした。

 これだけなら単なる「爆買い」で済む話だが、航空機業界を驚かせたのは、ボーイングが旅客機の生産機能の一部を中国に移す決断をしたことだ。ボーイングは中国の航空機メーカーである中国商用飛機(COMAC)と、小型旅客機「737」シリーズの内装品取り付けや塗装などを行う施設を整備。また、以前から部品製造で協力している中国航空工業集団(AVIC)との協業拡大も表明した。

 同社の決定は事前に報道で漏れ伝わっていたこともあり、雇用喪失を警戒するボーイングの労働組合は猛反発した。このため、同社はわざわざ「中国拠点がワシントン州の雇用を減らすことにはならない」とプレスリリースに明記するほど、雇用維持のアピールに必死だ。

ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ボーイングの中国拠点開設に対する業界の声を拾いました。今回の決定は、米中の航空機産業が接近する「最初の一歩」となるのか、それとも「単なる中華系航空会社向けのアピール」で終わるのか。それを判断するにはまだ時期尚早ですが、いずれにしても日本の航空機産業の行く末にも大きく関わってくる問題になると思います。

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