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かつての期待はどこへ…パナソニック、困難続きの車載機器事業が足かせに

かつての期待はどこへ…パナソニック、困難続きの車載機器事業が足かせに

車載事業は車載電池や運転席周辺のシステムなどを手がける主力事業だ

パナソニックは車載電池や運転席周辺のシステムなどを手がける車載機器事業で苦境が続いている。かつては津賀一宏社長が成長戦略の柱に据え、大きな期待を背負った。だが、米テスラと協業する電気自動車(EV)用電池工場の生産立ち上げや車載機器開発の費用がかさみ、営業赤字の状態を抜け出せない。事業立て直し方針を示しているが、今度は新型コロナウイルス感染拡大などの新たな困難に見舞われている。(取材=大阪・錦織承平)

パナソニックの車載事業は、全社で見ると2018年度に売上高1兆9000億円を超え、事業規模は6年で2倍近くに拡大。一方で2%以上あった営業利益率は、18年度に0・7%まで低下した。

事業の中心である社内分社のオートモーティブ社は、米テスラと協業する米国電池工場の生産立ち上げ、角形電池工場の増強投資、車内情報機器用ソフトウエア開発、欧州向け充電器などの開発で費用が増大。19年度も営業赤字から抜け出せない見通しだ。

19年度からオートモーティブ社は収益改善が必要な「再挑戦事業」に位置付けられた。同社を率いる楠見雄規常務執行役員は19年11月の説明会で、受注案件の収益性管理の徹底や事業領域の集中などの対策で「再挑戦できる体制に全社を挙げてやっていく」と決意を示した。

その矢先に訪れたのが新型コロナの感染拡大だ。国内外の自動車メーカーが工場停止に追い込まれ、販売も減少。一部の車部品サプライヤーからは「売上高と営業利益は、5―6月は5割減の見通し」との声も聞こえる。パナソニックも電子ミラーなどを手がけるスペイン子会社「フィコサ・インターナショナル」で、1400人規模の一時帰休を決めるなど影響が及んでいる。

困難はまだある。19年度に四半期ベースの営業黒字を達成したばかりのテスラ向け電池だ。19年10月稼働のテスラ上海工場は新型コロナによる稼働停止を乗り越えて20年2月に生産を再開したが、同工場にはパナソニックと車載電池のトップシェアを争う中国寧徳時代新能源科技(CATL)と韓国LG化学が電池を供給する。

同工場はEVの最大市場で主力車種「モデル3」のほか、新型車「モデルY」も生産する計画で、今後の能力増強も計画される。さらにCATLは、テスラが21年稼働予定するドイツ工場にも電池を供給する計画を表明している。

テスラ向け電池の独占供給関係が崩れたパナソニックは、テスラと太陽電池の共同生産も解消し、両社の蜜月関係は変化している。パナソニック幹部は「(テスラの)ドイツ向けをやらないとは言ってない」と含みを持たせるが、中韓勢と価格競争させられる厳しい展開も想定される。

車載事業の体質改善の遅れが、経営体質の徹底強化を掲げるパナソニック新中期戦略の足かせとなることが危惧される。

日刊工業新聞2020年5月18日

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