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《ソニー編》ザ・インタビュー#2 話題の「FES Watch」は変革への狼煙

プロジェクトリーダー・杉上雄紀氏が語る誕生秘話「僕らはモルモット的なプロジェクト」

「個別案件のリスクよりもビジネスが立ち上がらないことを心配するべき」(十時氏)


 ークラウドファンディングでやろうというのは早い段階で決めていたんですか。
 「最初の3カ月の継続判断の時に、クラウドファンディングをさせてください、と言いました。ジャッジしたのは小田島と、担当役員だった十時(裕樹)です]

 ー十時(ととき)さんは子会社からソニー本体の経営企画担当役員になった「ソニー改革」のキーマンの一人ですよね。十時さんとのコミュニケーションはどんな感じだったんですか。
 「僕らのチームは特に多かったですね。十時がソニーモバイルの社長(14年11月に就任)になる前は、十時がいるフロアに朝、コーヒーを届けていろいろなアドバイスをもらっていました。毎回15分くらいですけど、月1~2回は行ってましたね」

 ー十時さんや今のCFO(最高財務責任者)の吉田(憲一郎)さんはソネットなどソニー本体の外での経験も多い。いわゆる技術開発に携わっている人たちと感覚が違いますか。
 「僕自身が役員といっても平井、十時くらいしか会っていないので何とも言えませんが、例えば十時は話しやすいし、的確なアドバイスをくれます」

 「一度、ある案件を相談に行った時に、『これをやりたいんですが、こういう障害があってなかなか進めません』と話すと、『個別案件のリスクよりも、今はビジネスが立ち上がらないことを心配するべきだから迷わず早くやるべきだ』と言ってくれて、なるほど、と思いましたね。そういう判断ができる人です」
 <プロフィル>
 杉上雄紀(すぎうえ・ゆうき)
 1982年8月生まれ、東京都出身。2008年東京大学大学院工学系研究科を卒業後、同年ソニー(株)入社、ホームエンタテインメント部門へ配属。テレビと連携するスマホアプリや新規商品の開発に携わる一方、ボトムアップの部門内アイデアコンテストのスタッフとして精力的に活動する。
 “デジタル化でファッションをもっと自由にもっと楽しく”をビジョンに掲げ、電子ペーパーを紙ではなく布として捉えて柄の変わるファッションアイテムを作るというデジタル・ファッション事業を発案し、2013年より有志を集めて業務外での活動を本格化。2014年4月に設立された新規事業創出部にて社内スタートアップFashion Entertainmentsとして活動を開始し、事業開発に邁進中。2015年7月より、First Flightにて第一弾商品である柄が変わる時計FES Watchの販売予約を開始している。
 (ニュースイッチ編集部、取材協力=トーマツベンチャーサポート)
 ※3回目は10月3日(土)に公開予定
本田知行
本田知行 Honda Tomoyuki バカン
「いかにシンプルなものにして世に出すか」「決められた期間、人数と予算の中で、…、何を捨てるかが一番難しい」という言葉が印象的でした。限られたリソースの中で、シンプルにクイックにプロトタイプを作成し、クラウドファンディングで、ユーザーにニーズを問う。ストーリーとして語るのは簡単ですが、なかなかできないことです。理解のある上長がいたこと、またメンターがいたことも、(もちろん杉上さんが熱意と行動力があってこそですが)新規事業を立ち上げる上で非常に重要な要素であると感じました。

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