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丸紅社員がインドネシアでデジタル母子手帳の企業を設立した理由

丸紅社員がインドネシアでデジタル母子手帳の企業を設立した理由

デジタル母子健康手帳サービス「ダイアリーブンダ」の画面イメージ

丸紅が2018年度から始めた社内公募型のビジネスプランコンテスト(ビジコン)で事業化挑戦権を獲得した案件の一つが、今春からビジネスを始めた。インドネシアで母子健康手帳をデジタル化し、妊娠から育児期に合わせた情報提供や発育状況の記録などを行う。採択案件には時間や場所、資金などを社員に提供して事業化に挑戦する機会を与える。創造的で自由なアイデアを提案できる環境を構築し、新事業の創出を狙う。(取材・浅海宏規)

丸紅は3月、インドネシアにデジタル母子健康手帳サービスの100%子会社「アサ・ベスタリ・チッタ」を設立した。同サービス「ダイアリーブンダ」は、スマートフォンのアプリを通じて母子健康手帳をデジタル化し、妊娠から育児期に合わせた情報提供のほか、発育状況や予防接種などが記録できる。

同社の篠原将司社長は「学生時代、幅広い事業形態が魅力で、商社に就職したいと考えた。入社後は、自分がこれをつくったと言えるビジネスを立ち上げたかった」とビジコンへ応募した経緯を述べる。

プライベートでも子育てのまっただ中にあり「子育て関係で何かやりたかったが、情報提供サービスは既に日本ではたくさんあった」(篠原社長)。16年の語学研修先であったインドネシアでは、母子健康手帳のようなツールは十分に活用されていなかった。「現地で普及しているスマートフォンに医療の記録を残せば、より精度の高い診断が受けられるのではないか」(同)と考えた。

丸紅によると、インドネシアでは紙媒体の母子健康手帳は発行されているが、日本などに比べ十分な活用がなされていない。年間出生数約500万人のうち31%程度に、発育不良などの問題があるともいわれる。このため保護者の知識レベルの向上が課題になっている。

社名のアサ・ベスタリ・チッタの頭文字の順列は“ABC”。「それぞれ希望、知識、意思といった意味を込めた」(同)という。現在は現地にある母子専用の病院向けに提案を進めている。母子健康手帳サービスを通じ、インドネシアの社会課題の解決にも貢献していく。

日刊工業新聞2020年4月29日

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