コンビニ「アイスコーヒー」の進化を影で支える製氷メーカーの秘密
製氷業を営む本田冷蔵(兵庫県姫路市、本田明良社長)は2014年、太子工場(兵庫県太子町)に約18億円かけて製氷工場を新設した際、経営革新計画を活用した。金融機関から低金利融資を受けやすくなったことで工場内に複数の氷製品を同時生産できる設備を導入。コンビニエンスストア向け大口需要に応えるなど、その後の事業拡大に大きく寄与した。
地酒メーカーが集まる兵庫県播磨地域で、酒造りの発酵過程に使う氷を作り始めたのが本田冷蔵のルーツ。キャンプや釣りといった行楽、スナックなどで使う袋詰め氷などを製造し、全体売り上げの約8割が氷製品だ。
経営革新計画を活用し工場を新設したのは、コンビニ向けカップ氷製品の生産を始めるためだった。当時、コンビニのコーヒーが広がりつつある頃で、本田社長はアイスコーヒーを入れるカップ氷があれば売れると考えた。コンビニチェーンに提案し、採用されたのがきっかけだった。
ただ、既存工場には内容量150グラム程度のカップ氷を作る専用設備はなかった。本田冷蔵で作る氷製品は、100キログラム程度の氷の塊から各商品に見合うサイズに粉砕していく。既存設備では「仮に100キログラムの塊から60キログラム分のカップ氷を作れても、残り40キログラムは細かい氷などで使えなかった」(本田社長)という。
そこで作った氷を無駄なく使えるよう、砕いた氷の大きさごとに仕分けして一度に複数の氷製品を作れる設備を工場に導入した。その結果、氷のロスを減らし効率的な生産ができるようになった。商品に使えない細かな氷も、水から氷に固めるのに使う冷却液を冷やす液体に再利用することで電気代節約に成功。本田社長は「年間400万―500万円削減できた」と満足げに話す。
現在ではOEM(相手先ブランド)品も含め、関西地区を中心にコンビニチェーン用のカップ氷を日産30万個作る。コンビニのコーヒーは人気があり、本田冷蔵にはカップ氷の引き合いが増えている。
同社では引き続き要望に応える体制を構築しつつ、大量生産によって原価を下げて、本田社長は「よりよい価格でお客さまに買ってもらいたい」と意気込んでいる。
(姫路・村上授)