新型コロナ感染拡大の影響でロボットの需要は伸びるか?
【影響を懸念】
新型コロナウイルスの感染拡大は、ロボットメーカー各社の中国生産に影響を与えた。安川電機、川崎重工業、不二越などは1月下旬に始まった春節(旧正月)休暇が終了した後も現地のロボット工場の稼働を停止。2月の中旬以降に再開したが、各工場の停止期間は数週間から約1カ月に及んだ。
足元では生産が回復する一方、販売への影響が懸念される。外出制限で商談の機会が減少し、展示会などのイベントも延期や中止が続く。生産ラインに組み込むロボットを、遠隔の顧客にテレビ会議などで提案することも難しく、「今後は需要減少に伴う生産への影響も考えられる」(ロボットメーカー担当者)との指摘もある。
【世界の3割】
中国は世界最大のロボット市場で、全体の3割以上を占める。その中国市場の販売面での存在感は大きい。日本ロボット工業会によると2019年の中国へのロボット輸出額(会員企業のみ)は前年比18%減の1844億円。国内を含めた総出荷額に占める割合は約3割、輸出額全体では約4割を占める。
国際ロボット連盟(IFR)は工場の自動化の進展などで、世界のロボット市場は22年までに年平均12%の成長を見込む。中でも中国は日米欧などと比べロボットの導入余地が大きく、「自動車部品や電機電子産業などを中心に中期で需要の拡大が期待される」(業界アナリスト)。
こうした成長を見据えファナックは19年に広東省広州市など3都市でロボットのエンジニアリング機能などを強化するため事業拠点を新設。川重は重慶市で組み立てライン全体を構築するラインビルディング機能を拡充した。安川電機は18年に江蘇省常州市でロボット工場を増設。三菱電機は同省常熟市でロボット生産を開始するなど対応を強化する。
【移管の動き】
一方、中国では米中貿易摩擦の影響で設備投資の様子見が継続し、19年のロボット需要は低迷した。サプライチェーン(供給網)の見直しを検討する動きも広がり、ロボットユーザーとなる通信機器メーカーなどは、すでに中国の生産能力の一部を他国に移管した。コロナウイルスの感染拡大に加え、その後の米中対立の行方によっては今後も、こうしたユーザーの動きが加速する可能性がある。
その新型コロナの影響は世界に広がっており、足元では不確実性がさらに高まる。一方、今回の感染拡大は「工場の生産を継続する上で人がリスクになり得る可能性を示した」(ロボットメーカー担当者)。人件費の高騰などで工場の自動化や省人化ニーズが高まる中国では、ウイルスの猛威を経験したユーザー企業が、ロボット化を一層推し進めることも予想される。耐え忍んだ後の回復局面に向け、自動化を加速するIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といった次世代技術の開発の行方が注目される。
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