MRJは日本の航空機産業を変えるのか(上)
「モノづくり日本会議」の講演会から
巨額投資必要、連携に期待
航空機関連の技術開発は、安全性を理由に実用化までに長い時間がかかる。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、機体を軽くして燃費性能を向上するために1970年代から研究されてきたが、実用化までに50年近くかかった。産官学が協力し、大学で基礎研究、国の機関で応用研究、企業が実用化する連携体制が望ましい。
さらに、研究には巨額の投資が必要であり、タイムリーな新技術の活用には、外部知財を積極的に使わなければならない。海外ではM&A(合併・買収)が盛んだが、日本でも自社技術に固執せず、オープンイノベーションとして開発の外部委託など外部知財を生かすことも必要だ。
日本の航空機産業の課題には、航空機製造会社と航空会社の連携がないことや、行政の管轄が統一されていないことが挙げられる。行政でいえば製造は経済産業省、運航は国土交通省、教育研究は文部科学省、自衛隊は防衛省とバラバラだ。
産業の裾野の広さも生かされていない。三菱航空機(愛知県豊山町)の国産小型旅客機「MRJ」開発はこうした課題を打開するためにも期待したい。
日本の大学の研究教育は、分野横断的な活動が少ないという指摘もある。東京大学には、技術と政策と産業を一貫して扱う三菱重工業の寄付講座や、米ボーイングからの教育寄付がある。交渉学演習や高校生を対象とした体験講座も好評だ。今後は、産業界の教育への積極的関与を期待したい。
(後編は9月30日公開)
日刊工業新聞2015年09月23日付紙面を再編集