【新型コロナ】世間騒がすデマにどう対抗すべきか
トイレットペーパーが生産中止になる―。新型コロナウイルスの感染拡大によりこんなうわさが世間を騒がせ、SNS(参加交流型サイト)の情報をデマと理解しつつも人々は買い占めに走った。SNSの投稿を解析し確実性の高い情報を抽出するサービスを展開するJX通信社(東京都千代田区)の米重克洋社長は「人々の行動が“災害対策モード”に入っている」と分析する。2次被害に巻き込まれないため個人や企業ができる対策は何か聞いた。
―デマを起点にトイレットペーパーの買い占めが生じました。
「この件から分かったのは、トイレットペーパーの生産中止という情報がデマかどうかは消費者にとってどうでも良いということ。重要なのは品切れになったという事実だ。このことを知った消費者は不安に駆られ購入に走った」
―「お湯を飲めばウイルスが死滅する」といったデマは人々が善意によって拡散させたとも解釈できます。
「北海道地震の時も『〇時に一帯の水道が止まる』『△時に余震が起きる』というデマが流れたが、これも善意から発信された。実のところ大抵のデマは善意から広まる。新型コロナ感染症も災害と同じような仕組みでデマ拡散が起きたといえる」
―デマに踊らされないために必要なことは何でしょうか。
「大切なことは二つ。一つ目は情報を受け取る際、事実と意見を切り分けて理解すること。事実のみを取り出し、主観的な意見に惑わされないようにしたい。二つ目は情報の発信者を確認すること。専門家でない人が言うことを信用する理由がないのに、不安に駆られて素人の意見をすんなり信じてしまう人も一定数いる。リテラシーが普及しなければ今後も同様の問題は繰り返される。確かではない情報をむやみに拡散しない『デマエチケット』を身につけたい」
「『ローマ教皇が新型コロナ感染症にかかった』という海外のフェイクニュースもあった。教皇がせきをしている写真が記事に添付されていたため、多くの人が信じてしまった。他のメディアも同じニュースを報道していないか確認すること、疑いを持つことが事実と意見を切り分ける第一歩になる。事実に基づいて冷静に状況を判断するべきだ」
【記者の目/AIと人との役割分担期待】
JX通信社が手がける「ファストアラート」は人工知能(AI)でSNSの投稿を分析し、確からしい情報を抽出するサービスだ。米重社長は「情報の収集はAIに任せ、人間はやるべき対策に集中すべきだ」と役割分担の重要性を強調する。デマ対策として個人がリテラシーを身につけるとともに、技術が問題解決の一助になることを期待したい。(森下晃行)