年間26万トン排出されていた卵の殻で配合紙、脱プラ提案
【さいたま】サムライトレーディング(埼玉県桶川市、桜井裕也社長、048・789・0808)は、卵殻パウダーを10―30%程度配合した紙「CaMISHELL(カミシェル)」を開発した。同紙を使った製品を新生紙パルプ商事(東京都千代田区)や三菱製紙と共同開発し、両社で販売。脱プラスチックが潮流となり紙への移行が進む中で、主に産業廃棄物として処理される卵殻をパルプや填料の代替として利活用する。
【配合ですみ分け】
新生紙パルプ商事と三菱製紙はカミシェルの商標とロゴマークを共同使用する。名刺用紙は両社が取り扱うが、卵殻パウダーの配合比ですみ分ける予定。
新生紙パルプ商事はパルプの一部代替として卵殻を使う。最低でも卵殻10%の配合を目標としている。1平方メートル当たり160グラムの名刺用紙のほか、手提げ袋、パッケージなどで使われるコートボール紙など4種類を製品化した。すでに5社への販売実績がある。
名刺の場合、しっかりとした紙質の紙を使うケースが多いため、従来と価格を変えずに提供できるという。2020年度は8億円の売り上げを目指す。現在は包装紙などの開発を進めている。将来は全ての紙に対応するとしている。
【填料の代替】
三菱製紙は紙の不透明度などの機能を調整する目的で添加する無機顔料である填料の代替として卵殻を利用する。填料には卵殻の主成分と同じ炭酸カルシウムなどが使われている。同社は1平方メートル当たり170グラムの名刺用紙を開発中で、4月をめどに先行してテスト販売する。初年度は名刺を主体とし、60トンの販売を目指す。品質の確立後は他の坪量帯へ広げる。製品はポスターや中とじ冊子、はがき、カードなどを想定している。価格は検討中。
【26万トン排出】
国内の割卵工場などから排出される卵殻は年間約26万トンと言われている。一部は肥料などに再利用されるが、ほとんどは産業廃棄物として処理される。サムライトレーディングは卵殻を処理して供給する。桜井社長は「卵殻は産業廃棄物のため、お金を出して二酸化炭素(CO2)を出すことになる」と警鐘を鳴らす。同社は卵殻を再活用する取り組みで1月、埼玉県が主催する第9回「渋沢栄一ビジネス大賞」の大賞を受賞した。