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副業が転職のお試し期間として活用されている

連載・副業市場 遠隔マネジメント #02
副業が転職のお試し期間として活用されている

ユートラ食堂の遅めの朝ご飯(左から2人目が岩崎社長)

【月50時間契約】

副業が転職へのお試し期間として活用されている。雇用企業と働き手の双方の相性を実際に働きながら確認できる。ただ通勤が難しいため遠隔勤務が中心となる。副業ならではコミュニケーションが必要になる。

「副業経由でなければ採れない人材が入社してくれた」とYOUTRUST(東京都品川区)の岩崎由夏社長は目を細める。同社は転職や副業の人材紹介サービスを手がけるスタートアップだ。自社でも副業を経由して人材を採用した。副業で任せた仕事は事業構想や人材サービスのマネタイズ設計と、経営の根幹に関わる部分だ。本来、取締役相当のメンバーを迎えた。

同社の町田優樹プロダクトマネージャーはリクルートに転職した直後にYOUTRUSTから声をかけられた。月50時間の副業契約で、サービスのKPI(評価指標)設計や施策を走らせていった。リクルートの仕事帰りにYOUTRUSTのオフィスに通い、副業を始めて半年で転職を決めた。町田氏は「自分が入ることで成功させられると確信できた。その上で転職市場を変える挑戦にワクワクした」と振り返る。

【情報共有】

YOUTRUSTの従業員は21人。この内13人が副業だ。遠隔勤務が中心のため、ビジネスチャットやテレビ会議などのツールを使って情報共有する。副業メンバーとの情報格差をなくすため、オフィスにいるメンバーも相談や報告をチャット上にオープンにする。そして月曜を休業日にして土曜を出勤日に変えた。副業メンバーが集まりやすい土曜に定例ミーティングを開いて進捗を確認する。それでも顔を合わせる頻度が少ないため、仕事のないメンバーも気軽に立ち寄れるように「ユートラ食堂」として岩崎社長が手料理を振る舞っている。

人材紹介サービスでは副業者の稼働時間に合わせて、仕事を細かく分割してタスクを割り振り管理する「マイクロマネジメント」は推奨していない。スタートアップを志向する人材にタスクを頼んでも面白みに欠けるためだ。岩崎社長は「時間に余裕があり、経営に重要な仕事を任せることが大切」という。

【ゴールを明確に】

そして互いに転職というゴールを明確にして期間を区切ることを推奨する。期間内に人物や職場を見極めようとコミュニケーションを意識させる。

働き手にとっては転職を決めてから仕事を探すよりも、多様に働きながら次の仕事を選ぶ方が健全だ。いずれ本業と副業の垣根はなくなり、転職は転機でなくなって日常になるかもしれない。(取材・小寺貴之)

日刊工業新聞2020年3月5日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
50年後も本業と副業という仕分けをしているでしょうか。米国では大学の研究者が複数のベンチャーを経営しつつ、大企業にコンサルしています。肩書としての大学教授は大切ですが、収入や研究予算は学外から集めています。日本にも一人でいくつも仕事を受けて稼いでいるフリーのエンジニアはいて、受けているプロジェクトごとに別の組織の名刺を持っていたりします。こうした人は転職とは考えず、面白しろそうな仕事に手を出しては注力する割合を変えています。個人向けのプロジェクト管理や収支管理ツールが広がると思います。

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